2002 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素時に応答する新しい遺伝子の検索―窒息の確定診断をめざして―
Project/Area Number |
14657113
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中園 一郎 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (30108287)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池松 和哉 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 講師 (80332857)
津田 亮一 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 講師 (20098875)
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Keywords | 法医剖検脳 / 遺伝子発現 / 窒息 / RNAフィンガープリント法 |
Research Abstract |
法医剖検脳における低酸素時(窒息等)の分子生物学的応答は現在でも不明なままである。このために窒息の診断は主観的に促えられる所見(外表所見、内景所見)に頼らざるを得ず、乳幼児突然死例の場合のように同様の症例においても、法医学者によってその死因の診断に差異が生じている。そこで、科学的かつ客観的な窒息の診断法を確立することが急務であると考え、RNAフィンガープリント法(DD法)を用いて低酸素時(窒息等)に応答する遺伝子の発現を解析し、窒息の診断が可能であるかを検討するための基礎的データを得る目的でこの研究を行った。死後経過が1日以内の頭部外傷の認められない症例22例(頸部圧迫:5、溺水:7、失血:5、心臓死:5)の剖検時に採取した海馬よりRNAを抽出した後、DD法を行った。具体的にはbiotin付加した(T)_<12>MNをアンカープライマーとして、mRNAを選択的に逆転写した後、任意プライマー5種を用いてPCRを行った。PCR産物をPAGE法により分離し、メンブレンに転写してbiotin-avidin反応を利用した化学発色を行った後、各症例におけるバンドパターンを比較検討した。窒息死(頚部圧迫、溺水)例にのみに発現するバンド(目的バンド)よりDNAを抽出し、再増幅後、塩基配列を決定した。得られた配列についてホモロジー検索を行い、既知の遺伝子との相同性を検討した。DD法の結果、目的バンド15本が見出された。これらの中で11本の塩基配列はT細胞分化抗原等の6個の既知遺伝子、3個の機能不明な遺伝子と高い相同性を示した。しかし、4本のバンドは類似した塩基配列がデータベース上に登録されておらず、未知遺伝子の一部と考えられる。今後、得られた13個の塩基配列について発現量の差を再確認し、発現に差のある塩基配列について全遺伝子配列を決定した後、窒息時において特異的に発現する遺伝子の同定とその意義を明らかにしたいと考えている。
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