2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14657383
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
青江 知彦 千葉大学, 大学院・医学研究院, 助教授 (90311612)
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Keywords | BiP / ノックイン / 小胞体 / ストレス反応 |
Research Abstract |
虚血、低酸素、毒物などの侵襲が個体に加わると、細胞レベルでは蛋白質の正常な構造形成が阻害され、細胞機能の低下や臓器不全が起こると考えられる。異常な構造を持つ蛋白質が細胞に集積するとストレス反応が起こり、HSP70などのストレス蛋白質が産生され、異常蛋白を正常化するかまたは分解する。分泌蛋白や膜蛋白は細胞内小器官の小胞体で構造形成が行われるが、小胞体に異常蛋白が集積すると小胞体分子シャペロン(ストレス蛋白質)産生増加、他の蛋白の産生抑制、異常蛋白の分解亢進といった小胞体ストレス反応が起こる。異常蛋白の集積が解消されないと、やがて細胞死が起こると考えられるが、その分子機構はあまり明らかではない。こうした反応は、虚血、低酸素と言った急性の侵襲に対しても小胞体ストレス反応が起こる事から、急性の脳、心筋等の細胞障害、臓器不全の病態にも深く関与していると考えられる。小胞体ストレス反応から細胞死に移行する分子機構を明らかにすることによって、侵襲に対する細胞保護法や細胞死の回避のための方法論を検討することは、急性臓器障害に対する治療、予後の改善にも繋がる可能性があり、萌芽研究に相応しいと考えられる。 本萌芽研究ではこうした研究の端緒として、小胞体ストレス反応に重要な役割を果たす小胞体ストレス蛋白質BiPの変異体ノックインES細胞(マウス、胚性幹細胞)を用いて、小胞体ストレス反応が遷延化し細胞死が起こる過程の分子機構を検討した。BiP変異体は野生型BiPと同様に小胞体ストレスによって産生が誘導されたが、凝集し易い傾向があった。また、BiP変異体ノックインES細胞は野生型に比べて、小胞体ストレスに弱い傾向があった。 今後、BiP変異体ノックインES細胞を元に、BiP変異体ノックインマウスを作製し、個体レベルでの小胞体ストレス反応の分子機構を検討して行く予定である。
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