2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14657482
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
進藤 正信 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 助教授 (20162802)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸塚 靖則 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (00109456)
向後 隆男 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (80001949)
東野 史裕 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 助手 (50301891)
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Keywords | ポリリン酸 / 歯周組織再生 / 細胞走化性 |
Research Abstract |
ポリリン酸は、リン酸が直鎖上に重合したポリマーで、原核生物ではエネルギー供与体やリン酸リザーバーとしての機能が用らかになっているが、真核生物での機能は不明である。我々は、ポリリン酸が線維芽細胞増殖因子(FGF-2)を安定化すること、マウス骨芽細胞株MC3T3-E1細胞にosteocalcinやosteopontin遺伝子を発現誘導することを見いだし、再生医療への応用を考えた。 歯周組織の再生には、歯槽骨の新生とともに歯根膜の再生が必要となる。今回、歯根膜形成に関与するヒト歯根膜細胞に対するポリリン酸の影響を検証した。ヒト抜去歯牙より歯根膜細胞(PDF)を分離培養し、実験に用いた。PDFをリン酸重合度65の1mMポリリン酸(polyP65)あるいは1mMリン酸バッファー(オルソリン酸:コントロール)で処理し、PDFの走化性について検討した。その結果、コントロールに比較しポリリン酸は、ケモタキシスアッセイで歯根膜細胞の走化活性を促進し、アクチン線維の形態形成促進も確認された。マイクロアレイによる解析からも細胞骨格再編シグナル遺伝子の発現が確認された。これらの結果は、ポリリン酸はヒト歯根膜細胞の細胞内シグナル伝達の起因となり、細胞運動能を促進することにより歯根膜再生に関与することを示唆するものであった。 このようなポリリン酸のin vitroでの効果がin vivoにおいても生じるのかどうかをラットを用いて検索した。6週齢Wistarラットの左側上顎第一臼歯歯槽部の骨膜を剥離後、ラウンドバーにて骨欠損を作り、実験群にはポリリン酸(0.1μM)、対照群にはリン酸(0.1μM)0.5mlを週5日間局所投与し、1、3、5、7、10、14日目に安楽死させ、上顎骨を取り出し病理学的に検索した。その結果、実験群では術後3日目から炎症性細胞湿潤が消退し、術後5日目から骨芽細胞の増殖を認め新生骨形成が促進されていた。このような反応は対象群に比べて早期に生じており、ポリリン酸が生体においても組臓の修復・再生を促進する働きがあることが示唆された。
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