2002 Fiscal Year Annual Research Report
実験的CCIモデルにおける脊髄後角および神経軸策内NGF,GDNFの消長
Project/Area Number |
14657516
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
海野 雅浩 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (90014125)
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Keywords | CCIモデル / NGF / GDNF |
Research Abstract |
手術、外傷、また口腔領域では、抜歯や抜髄などで神経線維損傷した場合、長期にわたって持続する異常疼痛が見られることがある。このような疼痛を神経因性疼痛といい、症状としては痛覚過敏(痛みの増強)、異常感覚(触覚による疼痛)が多くみられるが、その発生機序は不明な点が多い。また、通常の炎症に対しては効果のあるアスピリンをはじめとする非ステロイド性抗炎症薬や強力な鎮痛作用をもつモルヒネなどの麻薬性鎮痛薬は無効であり、治療が困難である。ところで神経組織はNGF(神経成長因子)やGDNF(グリア細胞株由来神経栄養因子)によって維持されている。そこで、今回の研究では神経栄養因子の消長の観点から神経因性疼痛の発生機序をより明らかにし、今後の治療法開発の発展を図る。 末梢で痛覚伝達にかかわる組織摘出が網羅的である点、また、それらの部位での複数の神経栄養因子分布変化を追っている点が独創的であり、特色となっている。 痛覚過敏がおこっている場合、痛覚に関連する神経線維が優位になっていると考えられるので、痛覚一次求心性線維が分布している、いずれかの組織にて神経栄養因子が増加していると予想できる。一方、異常疼痛は、Aβ線維が痛覚伝達の二次ニューロンのある脊髄後角浅層への投射していると言われている、これは本来投射すべき痛覚伝達神経線維が減少したためであり、神経栄養因子の減少が予想できる。 神経因性疼痛がおこった場合、局所的に神経栄養因子発現量をコントロールすることでの発症を抑えられるのでないかと考えている。 本研究で、神経栄養因子の働きが明らかになれば、神経因性疼痛の発症機構の解明や治療法及び予防法の開発にとどまらず、神経細胞の発生学的、病理的、生理学的研究の発展に寄与することができると考えている。
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