Research Abstract |
本研究計画では,顎顔面領域の軟骨をより効率的に誘導し,歯や眼などの顎顔面諸器官をも誘導させることをめざし,アフリカツメガエル胚未分化細胞再集合培養系を用いて以下の検討を行った. アニマルキャップ(AC)をCa^<2+>,Mg^<2+>を含まないSteinberg's solution(SS)中で細胞解離後,activin A(25ng/ml)で1時間処理した細胞群とactivin A未処理群を種々の比率で混合し,Ca^<2+>,Mg^<2+>を含むSS中で再集合体を形成し培養後,組織学的解析ならびにRT-PCR法およびin situ hybridization法を用いて各種遺伝子の発現を検討した.また,再集合体を正常胚へ移植し,移植組織を組織学的ならびに分子生物学的に解析した. 1.Activin A処理細胞のみから形成した再集合体(Aat再集合体)は,培養期間7日では,組織学的にyork-richな内胚葉組織から構成され,内胚葉組織に発現するendoderminの発現を強く認めた. 2.Activin A処理群:未処理群1:1から形成した再集合体は,培養期間7日では,組織学的に主に脊索ならびに筋組織から構成され,Xnotおよび後方脊髄に発現するHoxb9の発現を強く認めた. 3.activin A処理群:未処理群1:5から形成した再集合体(1:5再集合体)は,培養期間7日では,組織学的に主に軟骨組織から構成され,顎顔面領域ならびに軟骨に発現するgsc,X-Hoxa2,X-dll4,Sox9,Col2の発現を認めた.in situ hybridization法の結果,培養期間4日目において,gsc,X-dll4,Sox9,Col2の遺伝子発現の局在を認めた.しかし,Hoxb9の発現は認めなかった. 4.1:5再集合体を正常胚(st23)下顎相当部へ移植を行ったところ,10日目の同組織は主に軟骨組織によって構成され,1日目,4日目の移植組織でgsc,X-Hoxa2,X-dll4,Sox9,Col2の発現をを認めた. 5.1:5再集合体を正常胚(st23)腹部へ移植を行ったところ,10日目の同組織には,軟骨組織,筋組織,神経組織,ならびに眼球様構造を認めgsc,X-Hoxa2,X-dll4,Sox9,Col2の発現を認めた. 6.1:5再集合体,下顎相当部移植組織,および腹部移植組織ではPax6の発現は認められなかったが,培養24時間の1:5再集合体,1日目ならびに3日目の腹部移植組織ではその発現を認めた. 以上の結果より,再集合培養系を用いてin vitroで未分化細胞から細胞分化ならびに位置情報をコントロールすることができた.位置情報を有した再集合体は,移植後もその情報を持ち続けて機能し,さらに眼球様構造や歯胚,等の顎顔面領域の諸器官の誘導も可能であることが明らかとなった.再集合培養系は,顎顔面領域の発生メカニズムの解明のみならず,再生医療においても有効なモデルとして考えられる.
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