Research Abstract |
本研究は組換えアルブミンを用いて薬物動態及びDDS研究への新しいアプローチを試みるものであり,二つの柱からなっている.一つは,アルブミン分子上の薬物結合部位を迅速かつ高精度に同定するアルブミン変異体の開発である.二つ目は,肝臓特異的に分布特性を示す変異体を用いて,インターフェロンを遺伝子工学的あるいは化学的に結合させた肝不全治療薬の製剤設計を企図するものである.まず本年度は,X線結晶構造解析データを基に,薬物結合に重要と考えられるアミノ酸を他のアミノ酸に変異させたダブル,トリプルなどのマルチプルミュータントを作製することにより,アルブミン分子上の薬物結合部位を迅速かつ高精度に同定すろことを試み,以下の知見を得た. 1)従来の化学修飾及びX線結晶解析データに基づき,サイトI結合に重要な役割を果たしていると考えられるアミノ酸残基,Lys-199,Arg-218,222,His-242,Ala-291を他のアミノ酸に置換させた2,3,4,5重変異体を作製する.またサイトIIについては,従来の知見(Arg-410及びTyr-411がKeyアミノ酸)に加え,新たにArg-485,Ser-489を他のアミノ酸に置換した変異体を作製した.作製に際しては,当研究室で構築したピキア酵母を培養細胞とし組換えアルブミンを発現させ,カラムを用いて精製し,SDS-PAGE及びCDスペクトルにより純度を検定した. 2)作製した変異体に対する特異的サイトリガンド(サイトI:ワルファリン,ダンシル-L-アスパラギン,P-アミノ安息香酸エチルエステル;サイトII:ケトプロフェン,ジアゼパム)結合性を調べ野生型と比較した.その結果,R410A/Y411AがサイトIIに対し全くあるいはほとんど結合しない変異体(サイトI活性型,サイトII不活性型),いわゆるノックダウンレセプター変異体となることを明らかにした. しかしながら,サイトIについては,サイトIIのようなノックダウンレセプター変異体を見い出すことができず,今後の検討課題として残すことになった.
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