Research Abstract |
胃がん術後患者の後遺症に伴う生活障害の実態はあまり報告されていない。今回は第1研究として,患者会の協力を得て術後1〜2年経過した160名を対象に,術後の食生活に関する実態を把握する目的で郵送法にてアンケート調査を実施した。倫理的配慮として,患者権利を守るため趣意書にて研究内容,参加方法,参加の取り消し,問い合わせ先,データ収集や処理等におけるプライバシーの保護,研究成果の公表方法,資金源を説明し同意を得た。結果は,79名から回答が得られた(回答率52.6%,有効回答率は100%)。対象特性は平均年齡52.6±6.3歳,性別は男性48名(60.8%),女性31名(39.2%)。術式は胃全摘47名,胃部分切除30名(回答なし2名)。術前術後の体重減少は78名(98.7%)に見られ,全摘では平均-11.5kg,部分切除では平均-7.2kg。一日の平均食事摂取量は全摘では約1256kcal,部分切除は約1350kcal。全摘と部分切除の平均摂取量の差は約94kcalで全打が少なかったが有意差はなかった。術前術後の食欲の比較では,減少は全摘40名(52.6%),部分切除29名(38.1%),増加は全摘2名(2.6%)。変化無しは全摘4名(5.2%),部分切除1名(1.3%)。早期ダンピングは,全摘・部分切除双方に症状を伴っており,腹部膨満,下痢,腹痛の順に頻度が多かった。晩期ダンピングも双方に伴っており,倦怠感,眠気,眩暈の順に頻度が多かった。その他の症状は全摘では貧血・吐き気など平均1つの症状を訴えていたが,部分切除ではほとんど訴えがなく有意差をみとめた(P値<0.05)。後遺症の症状は,術後1〜2年経過しても全摘で平均5.5症状,部分切除で平均4.7症状を抱えていた。 今回の調査を通して,術後は摂取量減少による体重減少・ダンピング症候群による苦痛など様々な症状を抱えながら生活している実態が朋らかになった。この結果を踏まえて,医療従事者は個々の患者・家族の気持ちに寄り添い,安楽な日々を過ごせるよう心身面のサポートを行う必要がある。今後は重復する後遺症の症状に伴う生活障害を評価する方法を開発することが課題である。
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