2002 Fiscal Year Annual Research Report
身体運動とヒトの記憶および情動との関係を探る〜ポジトロン断層法を用いて〜
Project/Area Number |
14658003
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤本 敏彦 東北大学, 大学院・医学研究科, 助手 (00229048)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田代 学 東北大学, 大学院・医学研究科, 助手 (00333477)
伊藤 正敏 東北大学, サイクロトン・RIセンター, 教授 (00125501)
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Keywords | 身体運動 / 脳活動 / ポジトロン断層法 |
Research Abstract |
本研究ではポジトロン断層法(PET)と^<18>F-fluoro-deoxy-glucose (^<18>F-FDG)を脳内のグルコース取り込み、つまり領域活性が観察した。被験者は健康な成人男子7名であった。約12時間の絶食の後、運動を開始した。運動は最大酸素摂取量(VO_<2max>)の55%強度での自転車運動である。運動時間は35分間であり、運動開始10分後に^<18>F-FDGを静脈より投与した。運動終了後ただちに脳のPETの測定を開始した。脳活動の観察はstatistical parametric mapping (SPM)を用いて画像化した。自転車運動では補足運動野の脚領域、小脳虫部、大脳基底核、帯状回の活性が認められた。脚運動を用いる全身運度では、補足運動野の脚領域と小脳虫部、大脳基底核は活性が予測されたが、帯状回の活性は興味深い結果であった。帯状回は主に動機づけ、つまり意欲の中枢であると考えられている。また後部帯状回は海馬体からの入力を受け記憶・学習に関与すると考えられている。55%VO_<2max>強度は乳酸閾値にほぼ一致する。自覚的運動強度では「ややきつい」「きつい」に分類される。努力を要する運動は記憶にも残りやすい。また長期的な運動は日常生活での行動意欲を増加させる。本研究の結果は以上のような現象に一致するものである。身体運動が学習能力の向上や、ストレス社会における精神の健康の維持増進に重要な要素である可能性が示唆された。本研究は身体運動の精神活動への影響を、初めてヒトにおいて直接的に明らかにした。
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