2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14658008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
跡見 順子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90125972)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新井 秀明 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (60313160)
政二 慶 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (30282510)
柳原 大 豊橋技術科学大学, 体育保健センター, 助教授 (90252725)
長尾 恭光 京都大学, 大学院・農学研究科, 助手 (80303874)
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Keywords | 身体活動 / 運動 / モノアミン / 乳酸性作業閾値 / ドーパミン / セロトニン |
Research Abstract |
身体活動を含めた生活習慣・生活環境は脳機能に大きく影響することが近年実験的に証明されるようになってきた。脳機能・脳形成に大きな影響を与える神経伝達物質として脳内アミンが知られている。脳内アミンは、チロシンから合成されるドパミン・ノルアドレナリンやトリプトファンから合成されるセロトニンなどが知られている。これらのモノアミンは情動・運動機能・性衝動などを調節するほかシナプス形成を制御することが知られており、分解に関係する酵素・受容体・トランスポータにはヒトにおいて遺伝子多型が存在しており性格の形成などにも関与することが知られている。これらモノアミンの動態が運動により調節できるのであれば、運動を気分障害や自閉症、痴呆症の予防や治療の一環として利用することが可能になるかもしれない。そこで本年度は、運動により脳内アミンがどのように調節をうけるかを検討した。運動は強度に閾値が存在し、ある強度以上と以下では代謝上も神経内分泌的な応答も異なる反応を生体に与える。この閾値は血中乳酸濃度の測定により求められる。C57BL/6マウスの5-7週齢においてこの閾値は18m/min程度の走速度であった。そこで15m/minを低強度の運動、25m/minを高強度の運動として運動負荷をかけ直後の脳を細分化しモノアミンをHPLCにより測定した。運動は低高両強度において脳内海馬におけるドパミン濃度を増加させた。また、高強度の運動は海馬におけるセロトニン濃度を増加させた。一方でノルアドレナリン濃度およびドパミン代謝・セロトニン代謝には変化が見られなかった。これらの結果から、記憶・学習において極めて重要な役割を持つ海馬におけるモノアミン濃度は運動により変化させうることが明らかとなった。
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