2003 Fiscal Year Annual Research Report
現行の特殊教育制度の狭間に位置する高次脳機能障害児への教育的対応の在り方
Project/Area Number |
14658063
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
野口 和人 宮城教育大学, 教育学部, 助教授 (40237821)
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Keywords | 高次脳機能障害 / 獲得性脳損傷 / 特別支援教育 / 復学支援体制 / 教育的支援 |
Research Abstract |
今年度は,獲得性脳損傷児,高次脳機能障害児への教育的支援の実態について,主として文献資料及び保護者への後方視的な聞き取り調査等により検討するとともに,具体的な教育的支援の在り方について,事例的な検討を試みた(脳炎後遺症児及び脳腫瘍後遺症児). 1.1990年にアメリカ合衆国では障害者教育法の障害カテゴリーに外傷性脳損傷が加えられたが,我が国でも,1989年に開催された日本特殊教育学会第27回大会のシンポジウムにおいて,獲得性脳損傷児への教育的支援についての検討の必要性が指摘されている.しかしながら,その後,教育的支援についてはほとんど検討が行われていない. 2.千葉県の全ての小・中学校,高等学校を対象とした高次脳機能障害児に関する調査,神奈川県や新潟県の医療機関を受診した子どもの予後等についての調査はあるが,そもそも獲得性脳損傷児や高次脳機能障害児の在籍数,教育的措置等に関する調査は皆無である.医療サイドによるフォローアップ研究の結果からは,復学した児童・生徒が,欧米で既に指摘されているような学校適応上の困難を抱えていることが明らかとなっている.具体的な支援にういては,個人により大きく異なるため,実践の蓄積が必要である. 3.しかしながら,我が国では,復学に向けた支援体制やフォローアップの体制がほとんど整えられていない.そのために,適切に対応すれば防ぎうる適応上の困難が生じてしまっている.聞き取り調査においても,この点に関する指摘が多くなされていた. 4.特別支援教育においては,医療,福祉,労働等の様々な領域が連携していくことが強く求められているが,獲得性脳損傷児の復学に向けた支援,及びその後の教育的支援に関しては,まさにそのことが当てはまる.特別支援教育を牽引するためにも,獲得性能損傷児への教育的支援の整備をモデル的に行っていく必要があるのではないだろうか.
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