2002 Fiscal Year Annual Research Report
揺らぎで働く超分子システム(細胞運動の光ピンセットによる測定)
Project/Area Number |
14658209
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮田 英威 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (90229865)
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Keywords | アクチン / ラチェット / 光学顕微鏡 |
Research Abstract |
細胞運動における重要なステップの一つである、細胞膜突出の物理機構を明らかにするため倒立型位相差顕微鏡上で光ピンセットを応用した測定を行った。光ピンセットで保持した直径1ミクロンのポリスチレンビーズをSwiss3T3繊維芽細胞の辺縁に接触させた。ビーズの位相差画像をCCDカメラで撮影後コンピュータに取り込みその輝度重心を解析した。その結果次のことが明らかになった。 (1)ビーズは細胞辺縁とおおよそ直角方向へ時々押し出され、再びもとへもどった。光ピンセットの性質からして押し出される時には細胞膜がビーズを押していることになる。 (2)細胞膜がビーズを押す際には加速と減速がみられた。これはビーズが戻る場合も同様であった。押し出される速さの最大値V_+と、戻る速さの最大値V_-の間にはかなり良い相関がみられた。 (3)膜がビーズを押し出す速さの最大値ならびにビーズが動く頻度は光ピンセットのばね定数を大きくするにつれて小さくなった。戻る速さ、頻度についても同様の傾向があった。 (4)サイトカラシン(アクチン重合を阻害する)存在下で測定したところ、動く速さ、頻度共に減少傾向を示した。以上の結果をまとめると次のように考えられる。細胞膜を押し出す機構は細胞膜直下のアクチンフィラメントネットワークの形成が担う一方、このネットワークが細胞の奥のほうで崩壊することが膜の引っ込む原因である、という仮説が提案されている。Swiss3T3のように細胞膜の位置が平均的にはかわらない接着性の細胞では膜の突出と後退がバランスされている必要があると思われ、我々の見たV_+とV_-の相関が理解できる。また、膜が出る速さも戻る速さも一様でないのは細胞内でのアクチンネットワーク形成と崩壊がお互いにフィードバックをはさんで絶妙に制御されたプロセスであることを強く示唆する。興味深いのは光ピンセットがビーズに及ぼす力ではなく光ピンセットのばね定数が細胞膜の動きに影響するらしいことである。ばね定数が光ピンセットに捕捉したビーズの熱揺らぎの範囲を決めるパラメータであることを考えるとこの結果は膜に接触したビーズの熱揺らぎの大きさが大きいほど、つまり膜が大きく揺らぐ余地があるほど膜が突出しやすいことを示唆している。アクチンネットワークの細胞膜直下での成長には細胞峡の揺らぎが必要である、という仮説が細胞腰突出の生物物理的機構として現在広く受け入れられているが、本研究の結果はこの仮説と矛盾しない。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Takahashi, F., Higashino, Y., Miyata, H.: "Probing peripheral membrane movements by optical trapping technique"Biophysical Journal. 84・4. (2003)
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[Publications] Miyata.H.(分担): "Proceedings of 6^<th> Fujiwara Simposium"A study of lamellipodial membrane dynamics by optical trapping technique (未定). (2003)