2002 Fiscal Year Annual Research Report
情報伝達分子はどのように細胞内カルシウム応答を誘起するか?
Project/Area Number |
14658218
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐甲 靖志 大阪大学, 生命機能研究科, 助教授 (20215700)
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Keywords | 上皮成長因子 / マイクロチップ / マイクロマニピュレーション / 1分子計測 / 蛍光測定 / 画像解析 |
Research Abstract |
我々は、細胞膜に150分子の上皮成長因子(EGF)が結合すれば、すべての細胞でカルシウム応答が起こることを発見した。これは細胞表面に発現する受容体の数の1%以下である。さらに、この分子数の閾値は、細胞の大きさによらないことが分かった。このような入出力応答を可能にする分子機構を解明するために、EGF刺激を時間、空間、濃度制御して細胞に与える方法を開発した。 ひとつはマイクロチップ加工による微小灌流装置である。Y字形の微細な溝(幅数+ミクロン)を持つシリコンラバーシートをカバーグラス上に培養した細胞に被せ、Y字の2本の枝の先から興なった組成の培養液を流し、もう一つの枝の先端から回収する。2つの溶液が層流を形成する条件では、合流点から先においても、溶液は混合することなく平行に流れていく。この流れの下に培養細胞を置くことにより、細胞の半分あるいはごく一部だけに、残りの部分とは異なった濃度の刺激物質を与えることが可能である。もう一つは、直径数ミクロンのダブレットガラス管の一方から試薬溶液を、他方から緩衝液を流出させ、下流においた直径10ミクロン程度のガラス管から溶液を回収する方法である。この方法は顕微鏡像を観察しながら任意の細胞の特定の位置に灌流を行うことができる。いずれの方法においても灌流液組成を時間的に変えることにより、時間変調を行うことができる。 これらの微小灌流システムを、1分子計測、細胞内カルシウム計測を同時におこなえる顕微鏡に組み込んだ。蛍光色素テトラメチルローダミンで1:1標識したEGFを細胞外に灌流し全反射蛍光顕微鏡で結合数を1分子計測した。画像解析アルゴリズムを自作し分子数を自動計測できるようにした。また、細胞内カルシウム濃度は蛍光指示薬(Fluo4)を用いて計測した。この方法で、細胞に与えるEGFを制御しながら、カルシウム応答を計測できるようになった。今後は時間的・空間的な細胞外刺激パターンとカルシウム応答の関係を可視化計測する。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Hibino, K., Watanabe, T., Kozuka, J.et al.: "Single-and multiple-molecule dynamics of the signaling from H-Ras to c-Raf1 visualized on the plasma membrane of living cells"Chem. Phys. Chem.. (in press). (2003)
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[Publications] Sako, Y., Uyemura, T.: "Total internal reflection fluorescence microscopy for single-molecule imaging in living cells"Cell Struct. Funct.. 27. 357-365 (2002)
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[Publications] Sako, Y.: "Imaging of biological molecules. 2. Membrane receptors""Nano-Optics" Kawata, S., Ohtsu, M., and Irie, M. ed.. 209-215 (2002)
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[Publications] 佐甲靖志: "一分子イメージング"医学のあゆみ. 200. 1092 (2002)
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[Publications] 上田昌宏, 佐甲靖志: "GPCR型走化性受容体の細胞内1分子可視化解析"「バイオイメージングでここまで理解る」楠見明弘、小林剛、吉村昭彦、徳永万喜洋編実験医学別冊. 99-103 (2002)
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[Publications] 宮内崇行, 日比野佳代. 佐甲靖志: "蛍光共鳴エネルギー移動のイメージング"「シリーズ・バイオサイエンス新世紀第12巻感覚器官と脳内情報処理」御子柴克彦、清水孝雄編. 210-217 (2002)