2003 Fiscal Year Annual Research Report
高強度スポーツへの参加が中高年の抑うつ傾向低減・保持に与える影響
Project/Area Number |
14701018
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Research Institution | St. Catherine University |
Principal Investigator |
矢野 宏光 聖カタリナ大学, 社会福祉学部, 助教授 (90299363)
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Keywords | 高強度スポーツ / ウルトラマラソン / 中高年 / 抑うつ |
Research Abstract |
我が国の運動心理学領域における先行研究においては、軽度の強度強度で行う身体運動が不安や抑うつの軽減に有効であり、その結果自尊感情は向上するという報告はあるものの、高強度での身体運動による抑うつ低減効果についてはほとんど述べられていない。むろん、高強度スポーツの参加者に適合した尺度の開発についての研究もほとんどなされていない。著者は、ウルトラマラソン(以下UM)という、1日で100キロもの長距離を走りきる過酷な競技に参加する中高年を研究対象として、UM完走が精神的健康度にどのように影響を与えているかについて研究を継続してきた。その結果、UMへの挑戦という大きな達成課題を設定し、それを達成することで自尊感情が高まり、それによって精神的健康度は向上することが判明した。 そこで、平成15年度においては、1)研究対象者について継続的に質的・量的両方にわたりデータ収集を行い、高強度スポーツ参加者の特徴をより詳細に分析・検討する。2)高強度スポーツ参加者用に適合した自尊感情測定尺度の精度を向上させ、より適合度の高い尺度にしていくことを中心とした研究調査を実施した。その結果、以下の知見が得られた。 1)UMレース後、自尊感情が向上する者と低下する者に分かれた。このことは、単に完走・リタイアという結果に起因しているのではなく、自己をどのように評価するかで異なっていることが示唆された。 2)抑うつ傾向の保持については、個人のUMに対する認知と意味づけによって、レース後の抑うつ低減保持期間が変化している。そして、これは単に個人の評価のみならず、個人を取り巻く周辺環境(家庭・職場・ランニング間等)によって影響を受けていることが判明した。すなわち、抑うつ低減保持期間は、身体的自己概念のみならず社会的自己概念と強く関連していることが示唆された。 3)高強度スポーツ参加者用に適合した自尊感情測定尺度の開発に関しては、共分散構造分析などを用いた分析を実施しながら検討が加えられ、より適合度の高い尺度に改良されている。
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