2002 Fiscal Year Annual Research Report
テラヘルツ帯原子・イオン禁制スペクトル線による銀河系内星間ガスの探査
Project/Area Number |
14702002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡 朋治 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (10291056)
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Keywords | 銀河系 / 星間物質 / テラヘルツ帯 / 超伝導素子 |
Research Abstract |
本研究では、テラヘルツ領域のSuperconductor-Insulator-Superconductor (SIS)およびHot Electron Bolometer (HEB)ミクサー素子を搭載したヘテロダイン受信機を開発し、それを搭載した望遠鏡によって中性炭素原子C^0の^3P_2-^3P_1遷移(0.809THz)および窒素イオンN^+の^3P_1-^3P_0遷移(1.47THz)の二本の輝線の広域観測を行い、星間ガスの「相変化」を包括的に理解することを目的としている。 今年度は研究の初年度にあたり、ミクサー素子の設計・開発と平行して、受信機システムおよび望遠鏡システムの整備・運用を行った。 ■Hot Electron Bolometer (HEB)ミクサー素子の開発 0.8THz帯,1.47THz帯HEBミクサー素子の設計を行い、国立天文台野辺山のクリーンルームにてその製作を行った。素子の描画に使用する電子ビーム描画装置の立ち上げに約半年を費やした後、HEBミクサーとして1GHz程度の中間周波信号を取り出せる精度の描画が可能になった。制作したHEBミクサー素子のうち、0.8THzミクサー素子については、液体ヘリウムを使用した冷却試験でI-V曲線を碓認した後、SIS受信機で使用していた導波管タイプのミクサーマウントに搭載して4K冷凍機による冷却試験を行った。その結果、導入した800GHzのLO信号に対してI-V曲線に明確な応答を確認した。 ■1.47THzミクサーマウントの開発 1.47THz帯HEBミクサー素子をマウントする、導波管タイプのミキサーマウント+ホーンの設計を行った。材質は銅+金メッキであり、マウントと一体化したホーンのパラメータは可搬型18cmサブミリ波望遠鏡に合わせて設計している。 ■受信機システムの開発 可搬型18cmサブミリ波望遠鏡に搭載する、冷却受信機システムを構築した。冷却には住友重機械工業製の小型閉サイクル4K冷凍機を使用し、可搬性を重視した冷凍機デュワーを設計・製作した。現在この受信機システムには500GHz帯SISミクサーが搭載されており、冷却試験とともに光学系および中間周波信号処理系のチェックが行われている。冷凍機cold headに搭載されたミキサーマウントは4.3K程度まで冷却されており、500GHz帯SISミクサー受信機としては雑音温度200K程度の性能を実現している。 ■可搬型18cmサブミリ波望遠鏡の運用 HEBミクサー受信機を搭載する予定の可搬型18cmサブミリ波望遠鏡を、南米チリのアタカマ高地パンパラボラ(標高4800m、ALMA建設予定地)に移設し、500GHz帯における運用試験を行った。現地での望遠鏡システムの立ち上げ手順はほぼ確立し、太陽および月からの連続波の検出に続いて、大気オゾン輝線の検出、そして現地では各国のグループに先駆けて天体からの中性炭素原子C^0の^3P_1-^3P_0遷移輝線(492GHz)の検出に成功した。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Kamegai, K., Oka, T., Yamamoto, S.: "Distribution of [CI] Emission in the ρ-Oph Dark Cloud"Proceedings of the IAU 8th Asian-Pasific Regional Meeting. 151-152 (2002)
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[Publications] Sawada, T., Hasegawa, T., Honda, T., Morino, J.I., Usuda, K.S., Sorai, K., Oka, T., et al.: "Physical Conditions and Structure of Molecular Gas in the Galactic Center"Proceedings of the IAU 8th Asian-Pasific Regional Meeting. 207-208 (2002)
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[Publications] Ikeda, M., Oka, T., Yamamoto, S.: "The Distribution of Atomic Carbon in the Orion Giant Molecular Cloud 1"The Astrophysical Journal Supplement. 139. 467-485 (2002)
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[Publications] Kamegai, K., Oka, T., Yamamoto, S., et al.: "Distribution of [CI] Emission in the ρ-Oph Dark Cloud"The Astrophysical Journal. 589(印刷中). (2003)