2003 Fiscal Year Annual Research Report
有限サイズ量子XYZ鎖における無限次元対称性の出現と準位交差そして温度相関関数
Project/Area Number |
14702012
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
出口 哲生 お茶の水女子大学, 理学部, 教授 (70227544)
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Keywords | 量子XXZ鎖 / 可解格子模型 / ループ代数 / レベル交差 / 準位統計 / AB磁場 / ベーテ仮説 / 対称性 |
Research Abstract |
量子XXZ鎖の異方性変数ΔをΔ=(q+1/q)/2と表す。この変数qが1の冪根のとき、XXZ鎖のハミルトニアンはsl(2)ループ代数の対称性を持つ。昨年度の研究では、sl(2)ループ代数の対称性が量子XYZ鎖でも出現することが示された。本年度は、捻られた境界条件の下でXXZ鎖の対称性の探求、関連するハバード鎖の準位縮退のベーテ仮説による特徴付け、さらには準位統計などXXZ鎖のスペクトル全体の性質の研究を行った。 捻られた境界条件の下で量子XXZ鎖に出現する様々な対称性を議論した。捻られた境界条件は周期的な鎖の内部をAB磁場が貫くような物理的状況に対応する。特に反周期的境界条件の場合、sl(2)ループ代数が量子XXZ鎖と交換する。さらにAB磁場の特殊値において、sl(2)ループ代数のボレル部分代数が系の対称性として出現する。 準位交差に関しては、量子XXZ鎖に対応する転送行列の固有値のスペクトルにおいて、準位が自然に枝分かれする準位分岐とよぶべき現象が発見された。解析的には特異性が予想されない有限サイズの系であっても、量子性のために特異性が生じうることは意義深いと思われる。 1次元ハバード模型における偶然縮退の出現をベーテ仮説の視点から研究した。準位交差する二つのエネルギー固有状態に対して、ベーテ仮説方程式の解を数値的に求め、エネルギー固有値と高次の保存量の連続的なスペクトルフローを導出した。 量子XXZ鎖のスペクトル全体の性質を特徴付けるため、準位間隔の分布を計算した。可解XXZ鎖において変数qが1の冪根のとき、sl(2)ループ代数の対称性のためにその準位統計は超ポアソン分布的とも言えるような、原点で急激に増加する振る舞いを示す。非可積分で次近接結合項を含む場合も調べた結果、XXZ鎖においてもその準位統計は、可積分系ではポアソン分布、非可積分系ではウィーグナー分布となることが確かめられた。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] T.Deguchi: "The sl2 loop algebra symmetry of the twisted transfer matrix of the six-vertex model at roots of unity"J.Phys.A : Math.Gen.. 37. 347-358 (2004)
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[Publications] K.Kudo, T.Deguchi: "Branches in the spectral flow of the inhomogeneous transfer matrix for the XXZ spin chian"J.Phys.Soc.Jpn.. 72. 1599-1602 (2003)
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[Publications] A.Nishino, T.Deguchi: "Bethe-ansatz studies of energy-level crossings in the one-dimensional Hubbard model"Phys.Rev.B. 68. 075114 (2003)
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[Publications] K.Kudo, T.Deguchi: "Unexpected non-Wigner behavior in level spacing distributions of next-nearest-neighbor coupled XXZ spin chains"Phys.Rev.B. 68. 052510 (2003)
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[Publications] K.Kudo, T.Deguchi: "The level statistics of XXZ spin chain with random magnetic fields"Phys.Rev.B. 69(to appear). (2004)
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[Publications] 出口哲生: "「統計力学と演算子」6頂点模型の転送行列に出現する$sl_2$ ループ代数の無限次元対称性"数理科学. No.490. 26-32 (2004)