2002 Fiscal Year Annual Research Report
過疎地域における広域バス路線の開設・維持に関する利害調整ルールの提案
Project/Area Number |
14702043
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
谷本 圭志 鳥取大学, 工学部, 助教授 (20304199)
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Keywords | 広域バス / 合意形成 / 補助金負担 / 公共交通 / 協力ゲーム |
Research Abstract |
バス市場の参入・撤退規制が緩和され,生活交通をどのようにして確保するかが中山間地域における自治体の課題となっている.その一つの方策として,広域バス路線を設定してそのバス事業に複数の自治体が共同で補助を行う取り組みがある.これにより,各自治体は補助金額を削減することができ,バス交通の維持が財政上容易になる.共同での補助は,それに関与する自治体間での補助金の分担を伴うため,各々の負担額への合意なしには実行不可能である.そこで本研究では,実際の場面で広く用いられている走行キロ比に基づく補助金負担方式やそれに代替しうる方式が自治体間での合意形成の観点から有効であるかについて検討した.現行の補助金負担方式としては,走行キロ比に基づく方式に加えて,起点からの走行キロ比,人キロ比に基づく方式などがあり,それらの有効性は協力ゲーム理論における「コア」を充足しているかで判断できる.協力ゲーム理論では,各自治体もしくはそれらの部分的な提携が独自に補助を行った場合を仮想し,その際に各自治体が得る社会的な余剰と全ての自治体が共同で補助する場合のそれを比較し,後者が大きければ共同での補助に全ての自治体が合意するという解釈を与える.また,すべての自治体の合意を得る社会的な余剰の範囲をコアと言う.以上の考えに基づき,本研究では,それぞれの補助金負担方式がコアを満たしているか否かで,合意形成の観点における有効性を判断した.その結果,人キロ方式及び利用可能なバスの便数に基づく走行キロ比がコアの充足性の観点から有効であることが明らかになった.ただし,コアは余剰の集合であり,実際には何らかの社会的規範によって一つの余剰が選択されているはずである.今後はその規範の推定と,推定された規範にもっとも近い補助金負担方式について検討を続けていく予定である.
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Research Products
(1 results)