2002 Fiscal Year Annual Research Report
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14703012
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
林 久史 東北大学, 多元物質科学研究所, 助手 (60250833)
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Keywords | 選択的XAFS分光 / 寿命幅フリーXAFS分光 / 高感度・X線分光器 / 化学シフト / 蛍光X線サテライト |
Research Abstract |
X線吸収微細構造(XAFS)分光法は、元素選択性のある局所構造解析法として、いまや確立した手段である。しかしその欠点のひとつは、対象原子が酸化数や局所的な結合状態が異なる状態で存在する場合、平均化された情報しか得られないことである。この克服法として、上記の違いによる蛍光X線の化学シフトやサテライトの出現を利用して、特定の蛍光X線バンドをモニターしながら励起スペクトルを測定する方法が提案されている。状態選択性がある事から、この方法を選択的XAFS分光法と呼ぶ。XAFSの構造研究における重要性を考えれば、その重大な欠点を解消しうる、この分光法の意義は大きい。しかし選択的XAFS分光の実現にあたっては、蛍光X線の化学シフトの小ささ(約1eV;自然巾は〜5eV)、そしてサテライト線の信号強度の弱さ(主線の1/10以下)という困難に直面する。このため選択的XAFS分光法は、その意義と可能性は認識されつつも、なお試験的段階に留まっていた。 そこで本年度、選択的XAFS分光法における問題点を解消すべく、5枚の円筒面湾曲結晶と2次元位置敏感型比例計数管を組み合わせた高感度・高分解能・波長分散型X線分光器の開発を行った。この分光器は平成14年12月に完成し、試験測定の結果、期待通りの性能が確認された。現在SPring-8にこの分光器を導入し、Mn化合物やDy化合物の選択的XAFSスペクトルを測定中である。 分光器の開発と並行して、アメリカのNSLSにおいてXAFSの選択的測定に関する予備実験も行った。その結果、本分光法によれば状態選択だけではなく、通常のXAFS実験では不可避である「自然幅による分解能の制限」にとらわれない、高分解能測定も可能であることが明らかとなった。 来年度は、このように当初の目論見を上回る可能性をもった本分光法の完成にむけて実験を続ける予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] H.Hayashi et al.: "Hidden electronic state of CuO revealed by resonant inelastic x-ray scattering"Phys. Rev. B. 66. 3105-33108 (2002)
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[Publications] H.Hayashi et al.: "Lifetime-broadening removed X-ray absorption near edge structure by resonant inelastic X-ray scattering spectroscopy"Chem. Phys. Lett.. (印刷中). (2003)