2003 Fiscal Year Annual Research Report
欠陥エンジニアリングによる非鉛強誘電・圧電材料の創製
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14703013
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野口 祐二 東京大学, 大学院・工学系研究科, 講師 (60293255)
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Keywords | 強誘電体 / 結晶構造 / 残留分極 / 抗電界 / ビスマス層状構造強誘電体 / 格子欠陥 / 空孔 / 第一原理電子状態計算 |
Research Abstract |
世界的規模で環境問題への関心が高まる中、有害な鉛を含まない誘電材料の開発が急務であり、緊急な課題として認識されている。現在、電子機器等の広範な用途で使用されているチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の代替材料として、Bi層状構造強誘電体(BLSF)が中心に研究・開発が進められている。しかし、残留分極値(P_r)の向上が課題となっている。本研究の目的は、欠陥エンジニアリングによる非鉛系強誘電・圧電材料の高機能化、および格子欠陥の役割解明である。欠陥の導入により、電子状態や局所格子ひずみといった微細構造の秩序変化が誘起され、機能性の向上へ寄与する。今年度は、第一原理電子状態計算により、層状強誘電体における陽イオン空孔および酸素空孔の形成エネルギーを評価した。また、陽イオン空孔を多量に含むTa系層状単結晶の育成に成功し、分極特性を調査した。電子状態計算により以下のことが明らかになった。 (1)焼成時の揮発により生成するBi空孔は、酸化ビスマス層よりも、層状構造を構成するペロブスカイト層に優先的に存在する。 (2)酸素空孔は、単独で生成するよりも、Bi空孔とペアー(欠陥複合体)で存在する。 (3)欠陥複合体において、酸素空孔はBi空孔の最近接サイトに位置する。 (4)高原子価イオン置換により陽イオン空孔が生成し、それらは最近接サイトにて複合体を形成するのではなく、ランダムに分布する傾向にあった。 Ta系層状単結晶の分極特性調査(25℃)により以下のことが明らかになった。 (1)自発分極は、ランダム配向多結晶体の3倍の21μC/cm^2であった。 (2)抗電界は、ランダム配向多結晶体の約半分の値であった。 陽イオン空孔導入により、自発分極は約1.5倍の28μC/cm^2まで向上し、欠陥エンジニアリングによる分極特性の飛躍的な向上が示された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Atsushi Kitamura, Yuji Noguchiら: "Polarization Properties of Praseodymium-modified SrBi_2Ta_2O_9 Thin Film prepared by Sol-Gel Method"Materials Letters. 58・11. 1815-1818 (2004)
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[Publications] Yuji Noguchiら: "Chemical bonding and eletronic states in α-PbO : Analysis by an ab initio band calculation"Journal of the Ceramic Society of Japan. 112・1. 50-56 (2004)
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[Publications] Masayuki Soga, Yuji Noguchiら: "Domain structure and polarization properties of lanthanum-substituted bismuth titanate single crystals"Applied Physics Letters. 84・1. 100-102 (2004)
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[Publications] Yuji Noguchiら: "Praseodymium-Modified SrBi_2Ta_2O_9 with Improved Polarization Properties at Low Electric Field"Journal of Applied Physics. 94・10. 6749-6752 (2003)
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[Publications] Tohru Higuchi, Yoshiyuki Moriuchi, Yuji Noguchiら: "Electronic Stuctures of Bi_<4-x>La_xTi_3O_<12> and Bi_4Zr_xTi_<3-x>O_<12> Single Crystals Studied by soft-X-Ray Spectroscopy"Japanese Journal of Applied Physics. 42・9B. 6226-6229 (2003)
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[Publications] Masatake Takahshi, Yuji Noguchiら: "Effects V-Doping on Mixed Conduction Properties of Bismuth Titanate Single Crystals"Japanese Journal of Applied Physics. 42・9B. 6222-6225 (2003)