2003 Fiscal Year Annual Research Report
植物ウイルスに対する新規防御応答遺伝子群の分子動態解析
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14704009
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
鈴木 匡 横浜国立大学, 大学院・環境情報研究院, 助教授 (40282694)
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Keywords | ラッカセイわい化ウイルス / 2bタンパク質 / 復帰変異 / ササゲ |
Research Abstract |
植物ウイルスに対する新規防御応答遺伝子群の候補として、シアン耐性呼吸酵素遺伝子(AOX)を介した経路があるが、この経路は、細胞質pH調節や炭素骨格の供給に重要であることも示唆され、植物ウイルスのみならず、広く環境ストレスに対して重要な働きをしていることが示唆される。従って、AOXを介した植物ウイルス防御機構は、AOXに関連した様々な経路が複雑に関係する可能性が高く、ウイルス側因子からの解析のアプローチも改めて重要と考えられる。 そこで今年度は、ククモウイルスの一種であり、マメ科植物に感染するラッカセイわい化ウイルス(PSV)を用い、AOX経路に関与すると報告され、ウイルス複製には関与しない2bタンパク質について解析を行った。PSVでは2bタンパク質の解析は皆無であり、まずは2b欠失ウイルスおよび2b変異体での反応を見ることとした。 PSV 2bの開始コドン直下流に終止コドンを導入して2b欠失体を構築し、このクローンのin vitro転写産物を、同じくin vitroで転写したPSVのRNA1、3とともにNicotiana benthamianaに接種したところ、接種葉・上葉ともに明瞭な病徴を示さなかった。タバコ上葉からはRT-PCRによりRNA2が検出され、シークエンスの結果2bに導入した終止コドンは保存されていた。一方、ササゲでは無病徴でRT-PCRによりウイルスRNAは検出されなかった。以上の結果、PSVの2はN.benthamianaにおける病徴発現およびササゲでの全身移行に関与していることが示唆された。 さらに、無病徴感染したN.benthamianaを2ヶ月以上栽培したところ、野生型PSV感染と異なる退緑症状を示すようになった。退緑葉から全RNAを抽出し、RT-PCRによりRNA2を増幅後、2b領域の塩基配列を調べた結果、開始コドンの直下流に導入した終止コドンは野生型PSV 2bのSerと異なるGlnに変異していた。現在、野生型PSVと復帰変異株の病徴型の差異と2bのN末端側アミノ酸配列の変異の関係について詳細に検討中である。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Suzuki, M., Yoshida, M., Yoshinuma, T., Hibi, T.: "Interaction of replicase components between Cucumber mosaic virus and Peanut stunt virus"Journal of General Virology. 84・7. 1931-1939 (2003)
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[Publications] 鈴木 匡: "キュウリモザイクウイルスの多様性と組換え -ゲノムの組換えは宿主範囲の広さと関係があるのか?-"化学と生物. 41・11. 706-708 (2003)
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[Publications] 根津 修, 吉田めぐみ, 日比忠明, 桑田 茂, 鈴木 匡: "ラッカセイわい化ウイルス(PSV)2bタンパク質のタバコとササゲにおける機能"日本植物病理学会報(講要). (予定). (2004)
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[Publications] 根津 修, 吉田めぐみ, 日比忠明, 桑田 茂, 鈴木 匡: "ラッカセイわい化ウイルス(PSV)2bタンパク質欠失クローンからの復帰変異株の解析"日本植物病理学会報(講要). (予定). (2004)