2003 Fiscal Year Annual Research Report
分裂酵母のDNA修復と損傷乗り越え複製制御機構の分子遺伝学的解析
Project/Area Number |
14704061
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
横井 雅幸 大阪大学, 生命機能研究科, 助手 (00322701)
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Keywords | 分裂酵母 / 損傷乗り越え複製 / DNAポリメラーゼ / ヌクレオチド除去修復 / 紫外線損傷 / 化学変異原 / 突然変異 |
Research Abstract |
(1)分裂酵母のDNA修復因子(ヌクレオチド除去修復、紫外線損傷除去修復関連因子)および損傷乗り越え複製活性を持つ複数のDNAポリメラーゼ(Eso1p、DinBp、Rev1p、Rev3p、Rev7p)に注目し、各遺伝子を破壊した株を樹立した。昨年度までに、各遺伝子破壊株の増殖能などは野生型並であることを報告している。 (2)作成した遺伝子破壊株の表現形解析を目的とし、紫外線および化学変異原に対する感受性を調査した。昨年度までに、一部の遺伝子破壊株における紫外線感受性実験の結果を報告している。まず、紫外線に対する多重遺伝子破壊株を用いた解析から、損傷乗り越え複製DNAポリメラーゼであるEso1pとRev(1,3,7)pの関わる経路が異なることを示す結果を得た。紫外線によるDNA損傷は主にシクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)と(6-4)光産物であるが、それぞれを特異的に修復する酵素を分裂酵母細胞内で発現することで、Eso1pが主としてCPDの乗り越え反応に、またRev(1,3,7)pが主として(6-4)光産物の乗り越えに関わることが示された。一方、紫外線損傷と同様にして修復されるDNA損傷を引き起こす化学変異原である4NQOに対する感受性は、eso1遺伝子破壊株で最も顕著であり、また塩基損傷を引き起こすMMSに対する感受性はdinB遺伝子破壊株で高いことが示された。これらのことから、損傷の種類に応じた損傷乗り越えDNAポリメラーゼの使い分け機構の存在が遺伝学的解析によって示された。現在、上記の研究をさらに発展させると同時に、異なる化学変異原に対する感受性と、それに伴う突然変異発生率の測定を行っている。 (3)生化学的研究から、多様な損傷に対する損傷乗り越え複製の制御は、Rev1を中心としたTLSポリメラーゼ間の相互作用によるモデルが提唱されている。申請者は、一連のRev1P変異体をrev1遺伝子破壊株で発現させ、機能的相補実験を行った。その結果、Rev1pが正常に機能するためには、他のTLSポリメラーゼとの相互作用領域とTLS活性領域以外に、重要な役割を担う領域を見出した。この領域は、DNA修復やチェックポイント関連因子に見られるBRCTドメインを含み、今後、TLS機構とチェックポイントなどの細胞周期制御との関係を明らかにする上で貴重な情報である考えている。
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