2003 Fiscal Year Annual Research Report
平安時代における雅楽・声明の理論体系形成過程に関する研究
Project/Area Number |
14710021
|
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
遠藤 徹 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (10313280)
|
Keywords | 雅楽 / 声明 / 音楽理論 / 平安時代 / 唐楽 / 楽譜 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度から継続して資料の調査、収集を行い、かつ分析をすすめた。資料調査は、京都大字附属図書館、学習院大学図書館などで行い、前者は、筝の伝承の中枢的な家であった菊亭家旧蔵史料を中心に調査を行い、平安時代からはやや下るが、中世の筝譜、笙譜などを収集し、分析をすすめている。後者は、声明譜の古写本が数点伝存し、現在それらの来歴などを調査中である。声明関係の資料は、その他天台宗や浄土宗の現行声明の視聴覚資料を収集し、分析をすすめている。また前年度収集した、宮内庁書陵部から新出した十世紀の楽目録である「新撰楽譜」については、集中的にその内容の把握と史料的意義を考察し、その成果を「宮内庁書陵部新出史料『新撰楽譜横笛三』」(『東京学芸大学紀要』2004年2月)にて発表した。そこで明らかにしたことの要点は次のとおりである。諸楽曲は唐楽の調子で整理されているが、その源泉は必ずしも唐楽に限らず、日本古来の歌舞、伎楽、林邑楽、度羅楽など多岐にわたっており、背景に九世紀に唐楽の理論をもとに諸系統の楽舞を体系的に整理したことがうかがわれること、『新撰楽譜』の本来の構成は、冒頭に唐代の理論書を引用しつつ理論関係を記述した部分が存した可能性があること、『新撰楽譜』で定まった調子体系は、平安時代の末まで、一部の調子が失われたことをのぞいて継続されたこと。なお、声明の理論化を促進した主要因に、法会における楽と声明の有機的結合が考えられるが、そうした場の詳細を把握するため、院政期の法勝寺の落慶供養の記録の分析を今年度より開始した。
|
Research Products
(1 results)