2002 Fiscal Year Annual Research Report
プラトン対話篇における神話(mythos)の修辞学的研究
Project/Area Number |
14710027
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Research Institution | Osaka Meijo University |
Principal Investigator |
加藤 素明 大阪明浄大学, 観光学部, 講師 (30330377)
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Keywords | プラトン / 神話 / 修辞学 / ミュートス / パウロ書簡 |
Research Abstract |
本研究第1年次は、プラトン対話篇の神話部分を修辞学的に研究する手がかりとして、聖書文献学の成果に基づく方法論の探求を行った。新約聖書のとりわけパウロ書簡においては、古典古代の修辞法(交差対句法chiasmus、倒置法、反復法など)がどの程度使用されているか、その頻度を測って個々の書簡について作者の物語手法を研究する手法が、西洋では1980年代から多くの研究者たちによってなされてきた。John Harveyの調査(1998年)によれば、パウロ書簡においては、修辞法の使用率の低い『ガラテア書』でもテキスト全体との字数比で67.4%であり、短編であっても『ピリピ書』80.5%や『テサロニケ前書』87.6%では多くの修辞法に依拠した語り方が用いられている(Harvey, John D. Listening to the Text. Baker Book House,1998:284-286参照)。こうした語り方の特徴がパウロ書簡諸書をどのように特徴づけているかについて、踏み込んだ研究が種々試みられている。だが他方で、こうした方法について批判も無くはない。Bruce Longenecker (Univ. of St Andrews)とその研究グループがこの方法論を査定すべく咋年公にした編著書の主たる関心事が、まさに、聖書を物語として研究する方法がパウロ書簡研究にもたらすメリット・デメリットについてであった。共著者の一人James Dunn(Univ. of Durham)は、諸論者の成果に一定の評価を与えたLで、個々の書簡を個々の完結した物語と見なす研究方法は、ともするとテキスト間の有機的連携を看過する危険をも併せ持っていると警鐘を鳴らしている(Narrative Dynamics in Paul : A Critical Assessment. ed. by longenecker, Bruce W. Westminster John Knox Press,2002:228-230)。修辞学を通じた作品研究は今また新たな局面を迎えていると言うべきであり、プラトン作品研究においてもよく顧みておかねばならない問題として、ここに明らかになったのである。
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