2003 Fiscal Year Annual Research Report
ルネサンスの家庭生活におけるイメージの位相研究―ロレンツォ・ロットの芸術を例に―
Project/Area Number |
14710032
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Research Institution | Kyoto University of Art and Design |
Principal Investigator |
水野 千依 京都造形芸術大学, 芸術学部, 助教授 (40330055)
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Keywords | イタリア・ルネサンス美術 / ロレンツォ・ロット / イメージ人類学 |
Research Abstract |
本研究は、ロレンツォ・ロットのスアルディ家礼拝堂装飾を考察する上で、とくに一六世紀前半の北イタリア・ロンバルディア地方(主としてベルガモ)の宗教的・文化的状況や家族生活との関連に注目している。 そこで昨年度より、当時この地域に流布した占星術的預言や奇蹟的幻視の言説がもつ政治的・宗教的意味作用を調査してきたが、今年度は、とくにロットの図像とも関連があると考えられる「夜の合戦の幻視」(ベルガモ近郊ヴェルデッロにおける奇蹟)に焦点を定め、その言説が、口承・文字(書簡レベルから小冊子、教皇勅書まで)・朗唱・図像という多様なメディアを通じていかに練り上げられ、意味をさまざまに変化・増幅させながら流布したかを問題にした。なかでも海外調査では、トレント大学教授オッタヴィア・ニッコリ女史の示唆を得て、これまで残存が難しいと考えられていた一枚刷り木版画チラシ絵の存在をスイス(チューリッヒ中央図書館ヴィック・コレクション)で確認することができた。概してこれらの言説は、匿名の一個人の幻視体験を端緒とすることが多く、そこから政治的意味を担う一大プロパガンダへと練成されていく過程が観察されるが、そのなかで重要な役割を果たした個人間の書簡、あるいは辻演歌師が朗唱・販売した小冊子などの一次資料も、イタリアおよびロンドン大英図書館に見いだすことができた。それらの分析から、メッセージの伝達経路のなかで、文字や言葉に対して、図像イメージというメディアがいかなる特殊性を孕み、どのような役割を担ったのかを問うとともに、それらの図像と、ロットの作品をはじめとするいわゆる芸術作品の図像との位相を、ルネサンス文化のなかで見定めていくかたちで研究を進めてきた。
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Research Products
(1 results)