Research Abstract |
本研究の目的は,視覚パターン認知に及ぼす加齢の影響を生涯発達的観点から検討することであった.本年度は,前期高齢者(60〜75歳),後期高齢者(76歳〜90歳)を対象に,形・模様・色の3属性からなる図形(3属性図形)と,形と模様,もしくは形と色の2属性からなる図形(2属性図形)を用い,共通属性を抽出させるという共通属性抽出課題を課し,視覚パターン認知の加齢の影響を検討した.得られた知見は以下の通りであった.1)3属性図形を用いた場合,形属性抽出は両年齢群ともに抽出できたが,加齢に伴って,模様から色属性の順に抽出が困難になった.2)両年齢群ともに,3属性図形よりも,2属性図形の方が,共通属性を抽出しやすかった.3)2属性図形に続けて3属性図形を用いた課題を行うと,前期高齢者は,すべての属性について2属性図形,3属性図形ともに抽出可能であった.一方,後期高齢者は,2属性図形ではすべての属性の抽出が可能であったが,3属性図形では,形・模様属性は抽出可能であったが,色属性は抽出が困難であった.4)3属性図形を用いた場合,共通属性抽出課題では,後期高齢者は前期高齢者より,模様と色属性の抽出が劣るが,同図形を用いた異属性を抽出する課題(異属性抽出課題)では,両年齢群ともにすべての属性の抽出が可能であり,年齢による成績差は見られなかった.5)抽出訓練を課したところ,前期高齢者は約半年後でも,訓練効果は持続されていたが,後期高齢者は,持続されていなかった.6)後期高齢者における3属性図形の共通属性抽出について,図形の提示方法を変えても,教示をよりていねいにしても,その傾向は変わらなかった.以上の知見をふまえ,加齢による注意容量の低下と,各属性を抽出する際に必要な注意負荷の違いによる順序性との関連から,注意容量レベルにもとづく共通属性抽出の加齢モデルを提案した.
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