2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14710058
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
菱村 豊 広島国際大学, 人間環境学部, 講師 (90293191)
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Keywords | 社会的匂い / マウス / ストレス |
Research Abstract |
ストレスを経験した動物の匂いは、同種他個体にとって警報信号として機能するのかをどうかを検証することが本研究の目的である。その準備段階としてまず、他個体の存在がマウスの味覚嫌悪学習に影響を与えるかどうかを検討した。サッカリンを摂取後中毒症状を示すマウスに、健常な他個体を呈示すると、他個体を呈示しない場合に比べて、被験体マウスのサッカリン忌避が弱まることが示された。この結果は、被験体がオスの場合もメスの場合も同様に示された。ラットの場合は、被験体自身が過去に味覚嫌悪を経験していると、中毒症状を示す他個体の存在によって、その味覚嫌悪を強めることがわかっている。このことを今回の実験結果と総合すると、中毒症状というストレス事態におかれた動物は、他個体からの情報を利用して、ある文脈では味覚嫌悪を強め、別の文脈では味覚嫌悪を弱めることができるのではないかと考えられる。今後の課題は、被験体が嫌悪を強めたり弱めたりする文脈の違いはどこにあるのかということと、他個体からの情報とは嗅覚的なものであるのかどうかを詳細に検討することにある。 後者の問題を検討するために、匂い呈示箱付き実験箱を製作した。電撃または毒物投与を受けた他個体の匂いをポンプで被験体のいる実験箱に呈示できるようにしたもので、直流安定化電源や流量計、電子パーツなどを用いることによって、実験箱への嗅覚刺激の呈示量を統制している。予備実験では、中毒症状を示すマウスからの匂いと健常なマウスからの匂いを同時に呈示し、その際の実験箱内での被験体の初発反応、匂い呈示口の選択率、凍結反応などの行動データを記録した。被験体は中毒症状を示す他個体からの匂いをより選好する可能性がある。
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