2002 Fiscal Year Annual Research Report
高次視覚課題遂行中の眼球運動および脳機能の総合的解析
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14710060
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中谷 智恵 理化学研究所, 認知動力学研究チーム, 研究員 (60217750)
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Keywords | シーン認知 / メンタルローテーション / 眼球運動 |
Research Abstract |
眼球停留時間を指標として、シーン回転課題中の情報処理過程を検討した。課題として被験者は1枚目と2枚目のシーン内の物の配置の異同判断を求められた。先行研究によると、1枚目と2枚目のシーンで見えの方向が変わると(つまり、シーンが回転すると)、判断にかかる時間はシーンの回転角度につれ延長するとされ、同様の延長は本研究でも認められた。一方、眼球がある物を再固視するまでとそれ以降の合計固視時間(第1パスタイムと第2パスタイム)詳しく見てみると、回転角度に比例した延長は第2パスタイムでのみ見られた。この結果、第1パスタイム中の処理と第2パスタイム中の情報処理は異なり、シーン全体の心的回転は再固視以降に行なわれている可能性が示唆された。また、シーンとしての統一性を与える参照系(本研究では物体の置かれた机)を除いた条件では、第1パスタイムには参照系あり条件に比べて変化がなかったが、第2パスタイムには延長が見られた。これは、参照系がないとシーンとしての組織化がしにくく、シーン内の物体を何度も見かえすためと考えられる。以上の結果から、「シーン表象」の構築には時間がかかり、シーンの心的回転など、この表象を用いていると考えられる処理は、刺激提示後すぐではなく全体的な表象ができてから、本研究からの推定では刺激提示後約1秒以降に行なわれていると推測される。(以上の結果は現在英文専門雑誌に投稿中。) また、回転以外の画像変換をシーンに施した場合の反応潜時も測定された。予備実験の段階であるが、シーンを縦・横方向に引き伸ばした条件では、回転のような反応潜時の延長はみられなかった。従って、シーン情報処理は、同じ線形変換でも、画像のゆがみには頑健であるが、回転には何らかの付加的な処理(回転によって見えなくなった面の補間など)を行なっていることことが示唆された。
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