2003 Fiscal Year Annual Research Report
高次視覚課題遂行中の眼球運動および脳機能の総合的解析
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14710060
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中谷 智恵 独立行政法人理化学研究所, 認知動力学研究チーム, 研究員 (60217750)
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Keywords | シーン知覚 / メンタルローテション / 眼球運動 / fMRI |
Research Abstract |
シーンの再認課題では,記銘した視点と異なる視点から再認する場合(例えば記銘時の位置から90度回転した位置から再認する場合)認識時間が長くかかる。我々の先行研究では視点の回転角度の増加に伴い反応時間も伸長することが示された(Nakatani, Johnson, & Pollatsek,2002)。このシーン回転課題中の眼球運動測定を行った実験(Nakatani & Pollatsek. in press)からは、シーンの見はじめ約1秒間と、見直しの始まるそれ以降では処理が異なることが示唆された。見はじめ1秒間では視覚入力とシーン表象の比較が観察者中心の参照系を用いて行われ、メンタルローテーションは行なわれない。以降の処理では視覚入力から再構成されたシーンのモデルとの照合過程が始まると推測され、メンタルローテーションがおこる可能性が示唆された。 本年度は、見始め1秒間の処理の解明に重きを置いた行動実験とfMRI実験を行った。行動実験では刺激の呈示時間を1秒と0.5秒に短縮したシーン回転課題を行い、正答率、反応時間のパターンを比較した。この結果、正答率は両条件とも85-90%で差がないが、反応時間では回転角度1度あたりの反応時間(いわゆるメンタルローテション率)が1秒条件より0.5秒条件で大きい傾向がみられた。この結果は、1秒条件では実際の刺激を見ての比較をおこなう時間的余裕があるが、0.5秒条件では呈示時間が短すぎるため、記憶から再構成された表象を用いた、実際の視覚入力に基づくのとは異なる処理が行なわれている可能性が考えられた。 同様の条件下でfMRI実験を行なった結果、現在までの限定されたデータ数の結果であるが、上記の仮説を支持するデータが得られた。特に、海馬の関与は1秒条件ではみられなかったが、0.5秒条件では大きく活性化した。従って行動実験から推測されたように、0.5秒条件では記憶から再構成された表象が用いられている可能性がある程度裏付けられたと考えられる。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Nakatani, C., Pollatsek, A.: "An eye movement analysis of "mental rotation" of simple scenes."Perception & Psychophysics. (in press). (2004)