2002 Fiscal Year Annual Research Report
日本語話者による英語音声単語の認知過程に関する実験的検討
Project/Area Number |
14710071
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
関口 貴裕 東京学芸大学, 教育学部・(第二部), 講師 (90334458)
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Keywords | 英語リスニング / 音声単語認知 / 分節化 / 語彙アクセス / 英語教育 / 反応時間 / コホートモデル |
Research Abstract |
本研究では,日本語話者が音声提示された英単語をどのように認知しているかについて,「単語の分節化(word segmentation)」のプロセスに注目して,検討を行った。分節化とは,連続的で明確な境界をもたない音声信号の中から単語の始まりと終わりを特定し,単語を切り出す処理のことである。聞き手がいかにして分節化を行っているかに関し,古くから唱えられている説に「語頭部の入力から単語全体を特定し,どこが語尾(=次の単語の開始点)になるのかを語尾の入力前に予測する」というものがある。これを受けて本年度は,(1)日本語話者は,英語リスニングにおいて語尾の音韻を予測しながら単語を聞いているか,(2)処理の方法に英語の熟達度による違いはあるか,の2点を明らかにすることを目的に以下の実験を行った。 日本人の英語熟達者ならびに非熟達者に,英単語および非単語(無意味語)を聴覚提示し,その中からターゲット音素(/t/)の有無を判断する課題を行わせた。実験の結果,ターゲットが語尾におかれている場合,単語条件(刺激語を途中で特定し,語尾の音韻を予測することが可能)での検出時間が,非単語条件(語尾の予測が不可能)のそれに比べ短くなった。また,英語熟達者では,語尾よりも前におかれたターゲットに対しても同様の反応パタンが見られたが,非熟達者の場合,語尾よりも前のターゲットに対しては単語条件と非単語条件の差が見られなかった。これらの結果から,(1)日本語話者も語尾の音韻を予測しながら英単語を聴いている,(2)英語非熟達者は,熟達者に比べ予測が可能になるタイミングが遅い,ということが明らかとなった。 本研究の成果から,英語非熟達者がしばしば感じる英語リスニングの困難の背後に,単語の特定タイミングの遅さ,ならびにそれによる分節化の困難があることが示唆された。
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