2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14710073
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鈴木 佳苗 筑波大学, 図書館情報学系, 講師 (60334570)
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Keywords | 青少年 / 不適応行動 / 殺人 / 家庭裁判月報 / 内容分析 |
Research Abstract |
近年、青少年による凶悪な殺人事件等の不適応行動が社会問題となっており、その原因について様々な議論があるが、この問題を実際に検討した研究は少ない。そこで、本研究では、青少年の不適応行動に関する既存の資料として、最高裁判所事務総局家庭局発行の『家庭裁判月報』に掲載されている昭和24年から平成13年までの少年事件のうち、家庭裁判所・地方裁判所で審査が行われた殺人事件の記録について内容分析を行い、事件の背景や加害少年の特徴等について検討した。分析対象事件は80件であり、事件の概要(凶器,殺害方法,計画性犯行の動機等)、加害少年の特徴(性別,学識,学識態度,成績,性格,家庭の経済状態,両親の養育態度,家庭の雰囲気等)、加害少年と被害者との関係について、2名の評定者によるコード化を行った。事件の概要については、ナイフ・包丁等、身近で容易に手に入れることができる凶器の使用、計画的でない犯行が多く、とっさの殺人が多い傾向が見られた。動機としては、その場の激情よりも、怨恨・敵意のほうが多くあげられており、とっさの犯行の背景に長期に渡る怒りや敵意の感情の蓄積があることが示唆された。加害少年の特徴については、男子が多く、無職少年や怠学者の割合は少ないが、成績の悪い者が多いという結果が見られた。加害少年の性格については、「未熟」「自己中心的」「自己顕示的」「爆発的」「視野が狭い」「内向的」「攻撃的」「衝動的」等の特徴が多く見られた。加害少年の家庭環境は、経済状態が悪い、実父・実母がいる者が多いが親の養育態度は「冷淡・拒否的」である場合が多く、両親の仲が悪い等、家庭の雰囲気が悪い場合が多いという結果が見られた。加害少年と被害者との関係については、熟知の間柄が多く、被害者に対して日頃から否定的な感情を抱いていたことが示された。
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