2003 Fiscal Year Annual Research Report
バイオテクノロジーの社会的受容に関する国際比較研究
Project/Area Number |
14710079
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
永田 素彦 三重大学, 人文学部, 助教授 (60271706)
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Keywords | バイオテクノロジー / 科学技術と社会 / 社会的表象 / メディア分析 / 言説分析 |
Research Abstract |
平成15年度は、前年度に引き続いて、メディア分析とフォーカス・グループ・インタビューを用いて、日本におけるバイオテクノロジーの社会的受容の様態を明らかにすることを試みた。これらの結果は、ヨーロッパ各国の結果と比較検討した。それぞれの概要は以下の通りである。メディア分析については、(1)平成14年度に1985年から2000年までの関連新聞記事の分析を行ったが、補充的に、2001年から2002年の関連新聞記事についても分析を行った。その結果、メディア言説を見る限り、日本におけるバイオテクノロジーの社会的受容の様態は、論争期から落着期へ向かいつつあることが示唆された。(2)新聞記事に見られるバイオテクノロジーのリスク・ベネフィット言説を分析した。その結果、全体に、ベネフィットに言及した記事が多数を占めること、リスクに言及した記事は徐々に増加していること、特に最近になって、リスクにも利益にも言及しない事実確認型の記事が増えていることが見出された。また、リスク・ベネフィット言及のパターンは、応用分野によって異なることも明らかになった。(3)体細胞クローン羊ドリー、および、日本初の体細胞クローン牛のと・かがの誕生をめぐる物語の日欧比較分析を行った。その結果、ヨーロッパにおいては、クローン動物は進歩とともに恐怖の象徴として語られているのに対して、日本においては、恐怖というよりもむしろ愛着や感動の対象として描かれていることが見出された。この結果は、社会的表象の成立過程の文化差を示唆するものとして考察された。フォーカス・グループ・インタビューについては、平成15年度は、特に、ヨーロッパのデータとの比較を行った。その結果、バイオテクノロジーに対して根源的な不安が語られること、遺伝子組み換え食品、クローン技術に対してその傾向が強いことなど、多くの点で、一般の人々のバイオテクノロジー観が日欧で共通することが見出された。主たる相違点は、動物に関連するバイオテクノロジーに対する認識であった。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] M.Nagata, A.Hibino, T.Sugiman, W.Wagner: "Biotechnology in the Japanese media and public"G.Gaskell and M.Bauer (eds.) Genomics and Society. Earthscan Publication. (印刷中). (2004)