2003 Fiscal Year Annual Research Report
作動記憶スパン課題の成績を規定する要因の認知心理学的モデル
Project/Area Number |
14710082
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
齊藤 智 京都大学, 教育学研究科, 助教授 (70253242)
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Keywords | 作動記憶 / 短期記憶 / リーディングスパンテスト / 作動記憶スパン / タスクスイッチング仮説 |
Research Abstract |
作動記憶は,さまざまな認知課題の遂行時に,一時的に情報を保持する機能・それを支える機構であり,現在,種々の記憶現象や認知心理学における諸概念,発達や加齢における認知機能の変化を説明するための重要なキーワードとなっている。この作動記憶の働きを測定するためにリーディングスパン・テストに代表されるような"作動記憶スパン課題"が考案され,現在頻繁に用いられている。本研究は,作動記憶スパン課題の成績を説明するための統一理論の構築を目的として案施された。昨年度は,リーディングスパン課題を用いて,作動記憶スパン課題に関する"タスクスイッチング仮説(Towse et al.,1998,2000)"を検討した。そして、(1)移動窓パラダイムを用いて、通常のリスト構造効果を追試し、(2)処理量の異なる文(長い文と短い文)の読み時間を等しくしても、リスト構造効果が生起することを示し、(3)処理量の同じ文(同等の音節数の文)の読み時間を変化させてもリスト構造効果は生起しないことを示した。ただし,これらの実験では,各文に含まれる音節数を操作して文処理量を定義したが,この操作では、内的な処理量(表象操作数)と表層的な処理量(音節数)を区別できない。本年度は,文に含まれる音節数を同等にしても内的表象の処理量を変化させることのできる"言語的推論"を使った作動記憶スパン課題を作成し,リスト構造効果を再検討した。その結果,(1)推論スパン課題を用いても,リスト構造効果が得られた。また,(2)推論スパン課題の得点は,読解能力テストの成績と有意な相関を示し,このスパンの妥当性が確認されたが,相関には短長,長短条件による違いはみられなかった。以上の結果は,作動記憶リスト内での時間的減衰を仮定するよりも,処理活動から記憶活動への干渉を仮定することによってうまく説明でき,一方で,作動記憶スパン課題における長期記憶の関与を考えることの必要性を示している。作動記憶スパン課題の成績は、符号化と長期記憶からの検索によって大きく規定されるということが示唆された。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Saito, S., Miyake, A.: "On the nature of forgetting and the processing-storage relationship in reading span performance"Journal of Memory and Language. (印刷中). (2004)