2002 Fiscal Year Annual Research Report
乳幼児が動きや属性を表す語を学習するメカニズムについての研究
Project/Area Number |
14710094
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
針生 悦子 青山学院大学, 文学部, 助教授 (70276004)
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Keywords | 語彙獲得 / 動詞 / 形容詞 / 幼児 / 事物の形状類似性 |
Research Abstract |
これまで、与えられた語の意味を子どもはどのように推論しているかを検討する際に主に取り上げられてきたのは、名詞であった。しかし、子どもが学習する語も名詞だけではない。そこで、名詞以外の語として、事物の動きを表すことば(動詞)や属性を表すことば(形容語)に注目し、子どもたちはどのようにしてこれらを学習していっているのかを検討した。 具体的にまず動詞の研究について言うと、これまでの研究で既に、発話状況から動きそのものを切り出し語に対応づけることは3歳くらいの子どもにとって困難なことが見いだされていたので、そこをさらに進め、子どもは何を手がかりに、動詞に対応づけるべき概念としての「動作そのもの」を切り出すことができるようになっていくのかを明らかにしようとした。そして本年度はその一要因として、動作に含まれる事物の形状類似性に注目した。結果として、動作に含まれている事物の形が似ていれば、子どもはそのことに助けられて、より容易に動詞を「動作そのもの」と対応づけられることが見いだされた。また、人が事物を持って動作をしている場面そのものを子どもがどのように記憶しているかを検討することにより、事物の記憶の方が動作そのものの記憶よりもしっかりしていること、したがって、このように概念として把握することの困難な動作そのものを概念化する上で、その存在自体が顕著な事物が大きな役割を果たしていることが示唆された。 一方、形容語の獲得の研究では、そもそも「〜な」といった語形を手がかりに子どもはその語が属性を指すということがわかるのかについて日本語ではまだ確認がなされていなかったので、本年度はそこから始めた。これまでのところで、既知の事物を指して、「〜な**だね」(**は事物の名前)のように新しい形容語が導入されると、5歳児は、この「〜な」がその事物の属性をさすと解釈できること、しかし、それ以前では、語の意味として、属性のみを事物から切り離してとらえることは困難であるらしいことがわかってきた。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Haryu, E., Imai, M.: "Reorganizing the lexicon by learning a new word : Japanese children's interpretation of the meaning of a new word for a familiar artifact"Child Development. 73. 1378-1391 (2002)
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[Publications] Haryu, E., Imai, M., Okada, H.: "Young children's memory for an action event"Paper presented at the International Society for Study of Behavioral Development. (CD-ROM版). (2002)
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[Publications] 針生悦子, 今井むつみ, 岡田浩之: "幼児における動詞の意味の切り出し:"自分でやってみる"ことの効果"日本教育心理学会第44回総会発表論文集. 194 (2002)
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[Publications] Imai, M., Haryu, E., Okada, H.: "Is verb learning easier than noun learning for Japanese children?:3-year-old Japanese children's knowledge about object names and action names"Proceedings of the 26th Annual Boston University Conference on Language Development. 1. 324-335 (2002)
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[Publications] 今井むつみ, 針生悦子: "レキシコンの獲得における制約の役割とその性質"人工知能学会誌. 18(1). 31-40 (2002)
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[Publications] 今井むつみ, 針生悦子, 岡田浩之: "動詞の学習における事物類似性の役割:アクションイベントの分割と要素のアラインメント"日本認知科学会第19回大会発表論文集. 36-37 (2002)