2002 Fiscal Year Annual Research Report
トラウマティックな感情経験の個人内処理と集団処理のメカニズムの解明
Project/Area Number |
14710103
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
余語 真夫 同志社大学, 文学部, 助教授 (90247792)
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Keywords | 心的外傷経験 / トラウマ / 感情 / 認知 / 精神反芻 / 告白 / 記憶 / 米国同時多発テロ |
Research Abstract |
本研究課題はトラウマティックな感情経験の個人内処理と集団処理メカニズムを解明することである。平成14年度は,トラウマティックな感情経験の個人内処理過程,とりわけ衝撃的な出来事に直面した後の個人の認知・感情・行動反応に焦点をあて,大学生の複数の標本群(研究1,研究2,研究3)を対象にそれらの反応の顕在状態を自己報告法で測定し解析した。 研究1(米国同時多発テロ事件に対する認知・情動反応の研究)では米国同時多発テロ事件に対する日本人標本の認知反応および情動反応に関するデータを解析した。事件直後の1ヶ月間に約95%の人々が精神反芻を経験し,約90%の人々が事件を話題にした社会的共有行動を示した。調査結果は日本心理学会第66回大会および日本感情心理学会第10回大会,第1回フラッシュバルブメモリ・ネットワーク会議(イタリア)で報告した。認知・情動反応の時間経過に伴う変化を調べるために平成14年5月に小規模のフォローアップ調査を実施し,平成15年3月には各国の研究者と協同で大規模のフォローアップ調査を実施した。これらのフォローアップ調査のデータは現在解析中である。 研究2(感情経験の告白の抑制因の探究)では,感情エピソードの社会的共有を抑制している理由を尋ねる質問紙を大学生250人に実施し,主要な抑制因として「自己保護」「明確化の困難さ」「意識化の回避」「否定的な他者反応の予防」「対人関係悪化への懸念」「他者への配慮」「話題の社会的価値の低さ」を同定した。研究結果の一部は日本感情心理学会第10回大会で報告するとともに,現在,専門雑誌に投稿中である。 研究3(心的外傷経験に対する思考・感情反応の研究)では,約300人の大学生を対象にして,現在も心を苦しめているトラウマティックな出来事(8種類)の有無,出来事が起こってから現在までの思考・感情反応の諸側面について自己評価するよう求めた。データは現在解析中である。
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