2003 Fiscal Year Annual Research Report
組織要因・集団要因・個人要因が産業事故発生に及ぼす影響に関する包括的検討
Project/Area Number |
14710115
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Research Institution | The Institute for Science of Labour |
Principal Investigator |
菅沼 崇 財団法人労働科学研究所, 研究部, 主任研究員 (60311271)
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Keywords | 産業事故 / 組織事故モデル / 組織要因 / 集団要因 / 個人要因 / リスク |
Research Abstract |
平成15年度は、以下の2つの観点から、"組織事故モデル(菅沼ら、2002)"の妥当性を検証するとともに、未だ本モデルにて十分に言及されていない「要因間の因果構造」を検討することを目的とした。 1.海外の組織問題事例の分析:カナダのオンタリオハイドロ社(原子力発電施設)において発生した組織問題事例(1998)を対象として、組織事故モデルによる事例分析を行った。その結果、a)本事例にて指摘されていた要因のうち、「集団風土」を除く全ての要因は組織事故モデルと対応していたこと、b)管理要因は「経営管理要因」と「中間管理要因」とに区別する必要があること、c)経営管理要因、中間管理要因、個人要因との間には、経営陣の個人要因→経営管理要因→中間管理陣営の個人要因→中間管理要因→作業員レベルの個人要因という「階層的因果構造」が存在すること、d)経営管理要因→組織心理要因→個人要因にわたる部分においては「双方向因果構造」が存在することが見出された。 2.国内化学プラントを対象とした面接調査:国内某化学プラントに従事する59名を対象として、「組織および組織を取り巻く環境における危険因子」に関する面接調査を実施した。その結果、当該プラントに潜在していた要因のうち、「集団知識」を除く全ての要因は組織事故モデルと対応していたこと、b)組織要因は「管理要因(経営管理要因・中間管理要因)」と「組織心理要因」とに区別する必要があること、c)外部環境要因→組織間関係要因→管理要因→個人要因→集団要因→組織心理要因という「組織内外多次元的因果構造」が存在すること、d)管理要因→個人要因→集団要因→組織心理要因にわたる部分においては「循環的因果構造」が存在することが見出された。 以上より、組織事故モデルの妥当性が部分的に検証されるとともに、新たに設定すべき「要因」および「要因間の因果構造」が明確化された。
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