2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14710120
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
樽本 英樹 北海道大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (50271705)
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Keywords | 国際移民 / 市民権 / 市民権経路 / ポストナショナル市民権 / デニズンシップ |
Research Abstract |
今年度は、国際移民が国民国家への挑戦を行っているかどうかをめぐる「国民国家への挑戦」論争を理論的に検討し、なぜ論争が息詰まったかを考察した。特に、ポストナショナル市民権論者やデニズンシップ論者、そして、アンチ・ポストナショナル市民権論者の言説を俎上に挙げた。その結果、論争が息詰まった第1の理由は、論争に参加している研究者たちは「正統化原理」と「促進要因」を混同していることであるとわかった。「正統化原理」とは、移民に市民権を与える際の言説的基礎である。また、「促進要因」とは移民に与える市民権を拡大させていく様々な要因のことである。もう1つの理由は、研究者たちが非西側諸国の動きを軽視し、西側諸国だけを観察して、理論的言明を形成していることである。そのような梗塞状態を打開すべく、論争の理論的構造を吟味し、新たな問いを構成した。その問いとは、「移民権利が拡大するために、どのような『市民権経路』が存在するのか」である。既存研究は、国内-法的経路、国内-政治的経路、国際-法的経路のいずれかを強調してきた。しかし、日本のこれまでの経験を市民権の各要素-領土的権利、経済的権利、政治的権利、社会的権利-に分けつつ精査したところ、国際-政治的経路が移民権利の拡大の有力な道でありうることがわかった。以上のような理論的研究結果を、2002年7月オーストラリア・ブリスベーンにおける国際社会学会(International Sociological Association, ISA)大会において発表した。
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