2002 Fiscal Year Annual Research Report
冷戦期におけるアメリカの対日プロパガンダに関する実証的研究
Project/Area Number |
14710128
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
井川 充雄 静岡大学, 情報学部, 助教授 (00283333)
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Keywords | プロパガンダ / アメリカナイゼーション / 冷戦 / 文化交流 / Voice of America |
Research Abstract |
今日、日本文化の中には、映画・音楽・スポーツをはじめとする多くの分野において、「アメリカ」的なものが多く存在している。また、ニュース報道においても、日本のメディアはアメリカに多くを依存している。その起源は、戦後の占領期にさかのぼることができるが、占領終了後も、アメリカは国務省や広報庁(USIA)などの機関を中心に積極的に日本に対する働きかけを行ってきた。 国務省やUSIAの対外プロパガンダ活動は、VOA(Voice of America)の放送、各種出版物の発行、博覧会・展覧会などのイベントの実施、それに人的交流など多岐にわたっている。東西冷戦を背景として、これらの活動は共産圏に向けて行われたが、日本をはじめとする西側同盟国に対してもさまざまな活動が実施された。「文化交流」によってアメリカの生活様式、思考、世界認識などを同盟国に広め、それによって同盟関係を強固にし、冷戦の勝利を目指すものであったと言える。とくにアジアにおけるパートナーとしての日本に対しては、占領終結後もアメリカの影響力を残し、日米関係を確固たるものにするとともに、中立主義や反米意識の勃興については、かなり注意を払っていた。 本年は、1951年のVOAの日本語放送再開の経緯を、国務省やUSIAの史料によって跡づけ、その目的や意図を検討した。VOAは短波放送を行う一方で、NHKや設立されたばかりの各地の民放放送局との「番組交換」に力を入れていた。それらを通じて、日本との文化交流を進めることで、占領終結後も日本を自由主義陣営にしっかりと繋ぎとめることを意図していたことが明らかになった。VOAについては、今後、さらに日本語放送の受け手の態度変容を明らかにする。
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