2003 Fiscal Year Annual Research Report
健康な教職認識を醸成する学校の組織的条件に関する研究
Project/Area Number |
14710179
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
安藤 知子 上越教育大学, 学校教育学部, 助手 (70303196)
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Keywords | 学校組織 / 教職認識 / 教育改革 / メンタル・ヘルス / 参与観察 |
Research Abstract |
本年度は9月から観察調査を開始した。対象としたのはS県S市のM中学校である。M中学枝は数年前まで荒れていたが教員の一致団結によって現在は落ち着いている学校である。一方、S県S市は市政レベルで大々的に教育改革に取り組んでおり、現在全国的に注目を浴びている。そのため、市内の中学校は当然そうした動向の渦中にあり、マクロな視野での変革を求める潮流とミクロな視点での日常の教育実践とがせめぎ合っている状況にある。したがって、〔子ども理解規範〕と〔学枝の組織成員としての行動規範〕とによって教師の教職認職を捉え、その健康を支える組織的条件を分析するのに適していると判断した。 観察調査の依頼は、2回にわたる校長との面談および職員会議への出席を通して、人権や特定の利益にかかわらないように配慮すること、データの取り扱いに細心の注意を払うことなどを含めて趣旨説明を行い、教職員の承諾を経て開始した。9月から現在まで毎月ほぼ1週間ずつ訪問し、8時10分頃から18時30分頃までを標準として、M中学校における日常的な教育実践、諸会議、職員室の様子等を観察している。この観察調査は次年度まで継続する予定であり、本年度はまだ研究成果をまとめていないが、現在の時点で以下のような諸点が明らかになっている。 (1)M中学校の教師にとって〔学校の組織成員としての行動規範〕は、まだ教育改革の動向に伴うものとしては意識されておらず、むしろ数年前の荒れた状態に戻さないために、という関心に強く結びついたものとして意識されていること。継続的に改革動向が実践現場に意識化されるまでの"タイムラグ"について検討する必要がある。 (2)生徒指導を中心に据えた〔学校の組織成員としての行動規範〕が強く意識されているので、「どちらの規範を優先させるべきか」といった葛藤状況には陥らずに済み、またうまく指導できないことを力量の問題として支援する雰囲気が職員室にある。そのため、教師個々人はかなりの割合で精神的に「健康」であると考えられるが、この「健康」については、それが醸成される仕組みを含めてさらに慎重な検討が必要である。
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