2003 Fiscal Year Annual Research Report
日本語と英語を母語にしうる国際児をめぐる多文化数育についての比較調査
Project/Area Number |
14710184
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
渋谷 真樹 奈良教育大学, 教育学部, 助教授 (80324953)
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Keywords | 多文化教育 / 異文化間教育 / イギリス / 国際児 / 言語 / アイデンティティ |
Research Abstract |
現在、日本の全婚姻件数の約20組に1組が国籍の異なる男女によるという一例にあらわれているように、家庭という、子どもを育てる上でもっとも基本的な場における多文化化がすすんでいる。そこで、本研究では、両親の一方が日本以外の文化的背景をもつ、いわゆる「国際児」を取り上げ、その教育およびアイデンティティ形成について考察している。本年度は特に、イギリス人男性と日本人女性とのあいだの子どもを対象に、学校を訪問したり、関係者に聞き取りを行ったりした。また、比較のために、イギリスにおける多文化教育の状況について調査した。 まず、近年国際児の割合が高まっている、海外の補習授業校について調査した。国際児とそれ以外の子どもでは、日本語能力や生活歴、将来の見通しなどが異なるため、補習授業校に対する期待も異なる。補習授業校が、日本への帰国を前提にした短期の駐在家庭の子どもを対象に設立され発展してきた経緯から、国際児への対応は遅れがちである。ロンドン補習授業校でも、同様の傾向がみられるが、特に日本語学習への配慮が必要な子どもに対しては、別クラスを設けるなどして対応している。また、保護者の学校運営に対する積極的な参与が特徴的である。 次に、児童・生徒の8人に1人がエスニック・マイノリティであるイギリスの多文化教育について研究した。複数の先行研究によると、エスニック・マイノリティの学業成績が劣るのは、語学力のみによるのではなく、家庭と学校、また、両親のあいだの文化的背景のちがいにもよる。そのため、政府は、家庭や地域との連携、異なる文化的背景を尊重した教育の重要性を訴えている。また、そうした方針を現場に浸透させるために、現職教員の研修が行われている。一方、学校では、エスニック・マイノリティ専門の教師を雇用したり、教材を整えたりして、英語指導や異文化理解のための教育環境を改善している。
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Research Products
(1 results)