2002 Fiscal Year Annual Research Report
生涯学習社会における遠隔学習者のための学習支援に関する研究
Project/Area Number |
14710187
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
熊谷 慎之輔 岡山大学, 教育学部, 講師 (30325047)
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Keywords | 生涯学習 / 遠隔教育 / 成人学習者 |
Research Abstract |
本研究の初年度においては、遠隔学習者に関する理論研究が主要な研究課題となった。遠隔学習者の観点から、理論研究を行うと、遠隔教育理論のなかでも「自律性と独立の理論(theory of autonomy and independence)」からの知見が有効な示唆を与えてくれることがわかった。 「自律性と独立の理論」は、ムーア(Moore, M.G.)がウェデマイヤー(Wedemeyer, C.A.)の「独立学習の理論」を発展させたものである。彼によると、遠隔学習者は、「目的の設定」、「学習方法」、「評価」の3点についての自律性を求めると指摘している。 確かに、自由度の高い生涯学習社会において、遠隔学習者には選択の可能性がひろがっている。しかし、同時に学習者自身の責任もそのぶん大きく、自らの学習活動を強くコントロールし、学習プロセスにおいて自律性や自己主導性を発揮していくことが求められてくる。そのため、ムーアの指摘は、遠隔学習者の学習プロセスにおける自律性を考察するうえで示唆深く、次年度以降の調査研究の枠組みにも効果的であると確認された。 その他、遠隔学習者にとって、「学習への動機付け」や「遠隔教育コースについての情報」などがコース修了の鍵を握る要因になることも明らかになった。さらに、先行研究によると、遠隔学習者の学習の成功には、フォーマルな学校教育(学習者の教育的な背景)の影響も大きいとの指摘もある。遠隔学習者としての「自己主導的学習能力」と「学校教育における学習能力やその到達度」との関連については、引き続き研究課題としたい。このように、本年度は、遠隔学習者の特性を理論的に把握することを中心に研究を行った。
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