2002 Fiscal Year Annual Research Report
中国農村部における文化大革命と教育に関する研究―オーラルヒストリーによって―
Project/Area Number |
14710194
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
山田 美香 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 助教授 (90331610)
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Keywords | 中国 / 農村 / 文化大革命 / 教育 / オーラルヒストリー / 思想 / 農業教育 |
Research Abstract |
本年は夏に中国広東省へ資料収集・聞き取り予備調査も兼ね、各地域の小学校、中学校に赴いた。その結果、新しい資料が得られたため、3本の論文を発表できた。 第一に、日本道徳教育学会紀要に掲載された論文である。文化大革命時期の広東省における高校の思想教育の実情を当時の史料を用いて綿密に検討した。そして思想教育が徹底していたこと、またその体制が従来の学校教育の枠組みとは大きく異なっていることが明らかとなった。教育が政治闘争に巻き込まれ、毛沢東主義にもとづき自己反省を求められ、生活を規制される生徒の状況を明確にした。第二に、中周四国教育学会での発表であるが、複数の人民公社時代の史料を用いて、農村部、都市部の中学・高校教育が農業教育重視の偏ったものであったことを指摘した。第三に、関西教育学会の紀要論文であるが、文化大革命時期の小学校教育に関して、小学校の性質、普及の度合い、生活と教育の一体化など新しい初等教育の試みがなされたことを明らかにした。しかし小学校は、教育機関としてではなく、革命の前線基地として人民公社、生産隊との協力で、就学のチャンスが無かった貧農の子どもを対象に開設された。また啓発式と称する教育方法が重宝され、政治教育が徹底して行われた。ここから政治から切り離されない小学校教育の実態と、政治教育と切り離さない限り就学率も上昇しなかった当時の教育環境とその限界が明らかである。以上のように文化大革命時期の教育は、30数年が経過した現在でもそのあまりに特殊な政治状況を鑑みると、否定的な評価をする者が多い。しかし1949年の中華人民共和国成立から1950年代の大躍進を経て、農村部の就学率は数十%に満たなかったことを考えると、文化大革命が小学校教育に貢献した側面があるのは否めないのではないかと結論付けられる。
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[Publications] 朝倉(山田)美香: "中国毛沢東主義と文化大革命"日本道徳教育学会『道徳と教育』. No.312-313. 4-10 (2002)
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[Publications] 朝倉(山田)美香: "中国文化大革命時期の中学教育"中国四国教育学会研究紀要. 47巻(予定). (2003)
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[Publications] 朝倉(山田)美香: "中国文化大革命時期農村における教育状況"関西教育学会紀要. 27号(予定). (2003)