2003 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ合衆国の公教育行財政制度改革にみる教育機会の平等化メカニズムの形成
Project/Area Number |
14710195
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
西村 史子 聖徳大学, 人文学部, 講師 (10316846)
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Keywords | 税控除 / 税額控除 / 所得控除 / 州法人税 / ペンシルバニア州 / 州憲法 / 政教分離 / バウチャー |
Research Abstract |
本研究は、チャータースクールの推進政策と家庭財力平等化政策の相互補完性を1980年代以降のアメリカ合衆国の公教育行財政改革の動向を分析し抽出することを目的としている。昨年度に実施した家庭財力平等化政策の推進状況、特にk-12学年の教育に関わる税額控除・所得控除政策の各州における進展状況の整理をふまえ、本年度は政策の相違が、異なる税制度と州憲法規定に由来するもの仮定して、両要因の相互連関の構造化を意図した。 そこで、ペンシルバニア州がAct4 of 2001により、企業がおこなう奨学団体への寄付を州法人税から控除することを認め、それらの奨学団体が支給する奨学金を受けて、私立学校へ通学を希望する中・低所得層家庭の児童生徒の学校選択の機会が増加した政策を分析し、「ペンシルバニア州における教育行財政改革の動向-Act of 2001によるバウチャーおよび税控除政策の展開」『聖徳大学人文学部紀要』第14号(2003年)で概説した。明らかとなったのは、アリゾナ州が開始した奨学団体への寄付を州所得税から控除する政策が、州法人税をも含めて各州で検討され採用され始めているという事態である。これらの奨学団体は設立および運営に関し州政府によって何らかの統制を受けており、児童生徒に支給する奨学金はscholarshipではなく、private voucherという通称を得ている。 またこの研究の過程で、州税制度の様々な相違も判明した他、州憲法の政教分離規定の厳格性と州司法府の解釈の時代性もまた行政府の政策に強い影響を与えてきたことが推測されたため、次に、我が国やアメリカ合衆国でも先行研究の多い州憲法の政教分離規定の文言比較および州最高裁判所の判決を、特に私立学校への政府資金の支給の是非をめぐって整理した。これらの作業の成果は、「アメリカ合衆国の州憲法にみる政教分離原則と学校選択制」『児童学研究』第6号(2004年)に発表し、厳格な政教分離規定のない、あるいは規定自体蓋然性の高い州では、全体として州最高裁判所の判断が連邦最高裁判所の判断に追随している傾向が見られることを指摘した。
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Research Products
(2 results)