2002 Fiscal Year Annual Research Report
学校内におけるセクシュアル・ハラスメントの社会学的考察
Project/Area Number |
14710197
|
Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
中西 祐子 武蔵大学, 社会学部, 助教授 (90282904)
|
Keywords | ジェンダー / セクシュアル・ハラスメント / 教師-生徒関係 / 学校言説 |
Research Abstract |
本年度は、学校内部のセクシュアル・ハラスメントをめぐる諸言説(ある行為がセクハラでない/セクハラであるとみなされるか)が、社会の中でどのように構成される可能性があるのかについて理論的考察を行うために、先行研究の収集と整理を行った。 主として収集したのは、ジェンダー・セクシュアリティ論、相互行為論、教師-生徒関係論、構築主義、エスノメソドロジー、ポスト構造主義的フェミニズムの各領域の書籍や資料(コピー)である。これらの領域に着目した理由としては、以下の4点をあげることができる。第一の理由は、ミクロな相互行為場面において二者間の権力関係がいかに発動されるのかを明らかにするためである。第二に、とりわけ学校空間、教室空間の特殊性に着目し、そこに潜む権力の発動メカニズムを考察するためである。 しかしながら、同一の現象に対する解釈が、行為者間で矛盾することが少なくないセクシュアル・ハラスメントを考察するには、上記の視点のみならず、ある社会現象に対する「解釈」(あるいはそれに関連して発生する言説)の社会的な構築メカニズムにも着目する必要があると思われる。そこで本研究では、第三の視点として、学校内部の全てのミクロな相互行為場面において、教師/生徒・学生といった社会的カテゴリーをアプリオリに設定することが可能かどうかという視点から、構築主義やエスノメソドロジーの知見に着目して考察を進めた。さらに第四の視点として、行為者によるパフォーマンス自体が社会的カテゴリーを産出するとみなすポスト構造主義的フェミニズムによる国内外の先行研究にも着目し、相互行為場面における「教師」/「生徒」あるいは「男」/「女」といったカテゴリーが、あらかじめ存在するのではなく、場面場面において初めて産出されるということへの着目がこの問題の社会学的考察において重要ではないか、という結論に至った。
|