2003 Fiscal Year Annual Research Report
強制移住後半世気を経た民族集団の生活戦略に関する人類学的研究
Project/Area Number |
14710217
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
風間 計博 筑波大学, 歴史・人類学系, 助教授 (70323219)
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Keywords | エスニック・マイノリティ / 強制移住 / ディアスポラ / 中産階級 / 都市移民 / ネットワーク形成 / キリスト教会 / 市場 |
Research Abstract |
バナバ島(現キリバス共和国)における燐鉱石採掘の進展および第二次世界大戦中の日本の軍侵攻により、島住民(バナバ人)は故郷の島から強制的に退去させられた。大戦終結後の1945年12月、住民は故郷のバナバ島に帰還することなく、現フィジー諸島共和国のランビ島へ半強制的に移住させられた。 移住から半世紀以上経った現在、バナバ人はランビ島を拠点にすると同時に、フィジー諸島国内の都市部に進出して生活を営む者が1,000人以上いると推定されている。都市におけるバナバ人の生活実態を明らかにすることを目的として、2002年7月14日から8月21日までフィジー諸島国において主に首都スヴァに滞在し、実地調査を行った。都市に居住するバナバ人のなかには、掃除婦やセメント工場勤務者等の低賃金労働に従事する者が確認されたが、その一方で、銀行員、大学教員、会社経営者として中産階級の位置を占める者が数多く見受けられた。さらに、4年制大学、技術系および教員養成専門学校に通う学生も数多くおり、彼らは卒業後、定職に就いて都市部に定着する可能性が高い。 首都にはランビ島政府の事務所が置かれている他、彼らの言語であるキリバス語によって礼拝を行うキリスト教会を建て、都市における拠点としていた。さらに市場においては、ランビ島産カヴァ(嗜好性飲料)を売るバナバ人の店があり、バナバ人の立ち寄り先になっていた。このような場所を結節点として、バナバ人移民二世・三世は緩やかなネットワークを形成していたことが判明した。バナバ人は、フィジー人と通婚した者の子孫を除き、フィジー人に同化することなく、国内の移民マイノリティとして、都市における生活を維持している実態が明らかになった。
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Research Products
(1 results)