2003 Fiscal Year Annual Research Report
台湾漁民社会における民俗知識と「日本」-植民統治の影響とその翻訳をめぐって-
Project/Area Number |
14710223
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
西村 一之 日本女子大学, 人間社会学部, 助手 (70328889)
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Keywords | 台湾漁民社会 / 植民地主義 / 移民 / 民族知識 / 民族集団間関係 / 技術伝承 |
Research Abstract |
平成15年度は、台湾(中華民國)において現地調査を中心的に行い、またあわせて日本と台湾の諸機関に赴いて文献サーベイを実施した。台湾南東部に位置する調査地では、カジキ突棒漁を主とする近海漁業の史的展開に関してインタビュー形式の現地調査を行った。調査にあたっては、特に日本植民統治の末期から台湾において「光復」と称される1945年の第2次世界大戦終了を挟む約20年間に展開した、漁業をめぐる日本人漁民と台湾漁民(漢人/アミス)のやり取りに焦点をあてた。この時期、植民統治期は「漁業移民」、光復初期は「留用者」として、日本人漁民はそれぞれの政治支配者側の技術コラボレーターの役割を果たすことで、台湾住民と対面していていた。日本人漁民と台湾漁民との、個人と個人の間で交わされた漁撈経験は、その後の近海カジキ突棒漁の活況もあり、調査地の漁撈知識に大きな影響をおよぼしている。これと関連して、日本植民統治期に発行された水産関連雑誌や新聞などの記事にあらわれる、調査地についての記録収集を実施した。これらの史料に加え、光復直後に中華民国政府によって徴用された日本人漁民に関する文献の分析を進めている。インタビューで得られたデータと文献史料の分析から、従来の植民地研究には欠けている、当時を生きた主体に接近する観点の重要性を確信することが出来た。さらに、戦後の台湾漁民社会に存在するイメージ化された「日本」の形成と民俗知識の関係性について、その解読の手がかりとなる歴史的背景の再構成を進めている。 以上の実績を踏まえた研究の成果は、日本および台湾において、研究報告あるいは論文発表を通じて、明らかにしている。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 西村一之: "但願捕魚成功:由臺灣東部〓旗魚観其民俗"台湾文獻. 54(2). 97-112 (2003)
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[Publications] 西村一之: "台湾社会における「日本」の存在に対する試論:日本語の位置づけ"日本女子大学紀要 人間社会学部. 14号. 21-34 (2004)
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[Publications] 西村一之: "台湾東部漁民社会における漁撈技術移転-カジキ突棒漁をめぐる日本人漁民の働き-"史境. 48号(未定). (2004)