2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14710236
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
東 幸代 滋賀県立大学, 人間文化学部, 助手 (10315921)
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Keywords | 日本近世 / 城下町 / 漁師 / 漁業 |
Research Abstract |
加賀・富山両藩を研究対象とした今年度は、金沢市立近世史料館・富山県立図書館所蔵史料を中心に調査を実施し関連文書の写真を収集した。また、自治体史や刊行資史料集を購入のうえ分析を行った。その成果として、次の4点があげられる。(1)両藩とも城下町が内陸部に位置し、他藩にみられるような城下町への漁民の強制集住は確認されないが、加賀藩の場合、金沢の外湊である宮腰町に、一般的な町方(城下町)漁師に存在形態の近い特権的漁民(諸役免除特権などを有する)を集住させた。一方、富山藩領内では、町方漁師に類似する特権的漁民集団の存在は確認されない、(2)両藩の漁獲物流通機構は金沢を中心として構築されており、若狭湾側は勿論、富山湾岸の漁獲物も、上魚は高岡魚問屋に集荷され、金沢に送られていた。また、富山藩領の在方漁民のうち、特権的漁業権をもつ漁民は、加賀藩主に対する功労を漁業権の根拠と認識しており、この点でも漁民が金沢を中心に編成されていたことがわかる、(3)上記の点と関連するが、両藩における漁獲物のうち最大の関心が払われたのは、献上魚である鰤・鯛等であり、加賀藩は通常の流通統制にとどまらず、不漁の際には、(1)に示した宮腰町の特権漁師に随時漁獲物確保を命じていた、(4)前年度の当該研究(若狭・丹後諸藩を対象)の成果として確認された、19世紀に他領へ魚肥鰯が流出する現象に対する藩の危機意識とその対応が、加賀・富山両藩でも確認され、魚肥鰯の確保が、当該期の日本海側領主層の共通の課題であったことが明らかになった。これらの成果をふまえ、来年度も引き続き、町方(城下町)漁師・藩の漁業政策(漁政)・漁業観の観点から研究をすすめる予定である。
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Research Products
(2 results)