2003 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀前半における清朝、ロシア、オイラト=モンゴル相互関係史の研究
Project/Area Number |
14710249
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
澁谷 浩一 茨城大学, 人文学部, 助教授 (60261731)
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Keywords | キャフタ条約 / ロシア / 清朝 / 満洲 / ジューン=ガル |
Research Abstract |
今年度1年間の研究成果は,平成16年3月26日に北海道大学スラブ研究センターで行なわれた第3回「ロシアの中のアジア/アジアの中のロシア」研究会における研究発表「18世紀露清関係史における諸問題〜キャフタ条約を中心に」の中に盛り込まれた。この発表の中で明らかにしたことの第一点は,キャフタ条約締結直前におけるロシア・清・ジューン=ガルの関係である。鉱山資源の開発を目的にしてジューン=ガルに「服属」をせまったロシアに対して,清朝はチベット仏教の僧侶を使者として派遣するなど,ロシアとは異なる手段によってジューン=ガルとの和平関係の構築を目指した。清側は来るべきロシアとの国境画定に備えて,ジューン=ガルとも同時に国境を確定することを意図していた。これまでは清はジューン=ガルに対抗するためにロシアとの国境画定を急いだ,とされる場合もあり,当時の清側の姿勢のとらえ方に見直しを迫る新知見である。第2点は,キャフタ条約の締結過程についてである。昨年度の研究(「研究発表」の項参照)で詳細に明らかにした第4条の条文の変遷以外に,その他の条文も総合的に分析した結果,(1)北京での交渉におけるおける合意は従来考えられているような絶対的なものではないこと,(2)後の条文の基礎になったのは,従来言われているようなロシア側が作成した草案ではなく,清側が作成した草案であったこと,(3)従来批准交換がなされたと言われているのは誤りで,最終的に条文が確定する段階で清側主導で条文に手が加えられた部分があること,等を確認した。以上はキャフタ条約の締結過程に大幅な見直しを迫る新知見である。これらの成果はまもなく活字として発表する予定であるが,以上の新知見に基づき,キャフタ条約を18世紀中央ユーラシア史の中に明確に位置付けて行くことが残された課題となる。
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Research Products
(1 results)