2004 Fiscal Year Annual Research Report
自由貿易体制期におけるイギリス資本主義とトルコ市場
Project/Area Number |
14710262
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
武田 元有 国立大学法人鳥取大学, 大学教育総合センター, 講師 (40283965)
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Keywords | イギリス / トルコ / ロシア / 通商条約 / バルト海 / 黒海 |
Research Abstract |
本年度はイギリス産業資本のバルカン進出とロシア南部農業の黒海・地中海市場進出との対抗関係からトルコ領土をめぐる英露対立=東方問題を把握するべく、以下の二点を課題として設定した。第一に18世紀以来の長期的射程のもとでバルカン・黒海市場をめぐる英露対立の生成・展開を捉えるべく、一方におけるロシア南下政策・黒海貿易の始動、他方におけるイギリス海外貿易の新大陸・バルト海通商からアジア・レヴァント通商への転換、両者の対立過程から東方問題の発生を跡づけること。第二に、以上の史的背景を踏まえつつ、19世紀前半におけるトルコ領ルーマニアをめぐる英露両国の経済・外交関係を、一方におけるイギリス穀物法の撤廃とルーマニア穀物輸入の開始、他方におけるロシア南部農業の開発とイギリス向け穀物輸出の展開、両者の対抗過程からクリミア戦争の発生を理解すること、以上である。 うち前者の問題に関しては、設備備品費・調査旅費を利用して文献・資料を収集しつつ分析を進め、その成果として論文「18世紀前半におけるバルト海貿易とロシア南下政策」(『鳥取大学・大学教育総合センター紀要』第1号2004年)を発表し、イギリスによるバルト海貿易の展開がロシアによる対英貿易収支黒字の獲得=軍事財政の確立を保証したこと、イギリスによる英露通商条約の締結がロシアによる対土戦争の遂行=黒海貿易の開放を後援したこと、かくしてほかならぬイギリスのバルト海貿易こそがロシア南下政策を促進して後の東方問題の起源を醸成したこと、以上を結論として得た。また後者の問題に関しては、現在なお収集資料を分析している途中であり、次年度においても引き続き作業を継続する予定であるが、18世紀の英仏抗争が決着した19世紀初頭にイギリスのレヴァント市場参入と黒海・バルカン市場進出が本格化し、ここにトルコ市場をめぐるロシア南下政策との対抗要因が形成されたとの展望を得ている。
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Research Products
(1 results)