2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14710268
|
Research Institution | Hiroshima National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
小河 浩 広島商船高等専門学校, 一般教科, 助教授 (90290791)
|
Keywords | 古代ギリシャ / 傭兵 / 東地中海 |
Research Abstract |
前四世紀東地中海世界におけるギリシア人傭兵の活動の拡大傾向は、ポリス社会の衰退と密接に結び付けられて論じられてきた。本年度の研究ではアケメネス朝ペルシアがいかにギリシア人傭兵の活動に関与したかを明らかにした。ギリシア人傭兵は前五世紀中から小アジア沿岸部を中心としたペルシアの太守たちのもとで、ペルシア要人の身辺警護や重要都市の守備隊・領内の諸民族討伐・傭兵徴募などの仕事に従事していた。彼らは数百人単位で広くエーゲ海から地中海東岸に散在し、アケメネス朝でのギリシア人傭兵軍の中核を形成した。しかしペルシア王が自ら討伐に乗り出すような規模の反乱が発生した場合、新たに一万人規模の傭兵がギリシアから集められた。エーゲ海から地中海東岸の沿岸部にはアケメネス朝の支配に服さない諸民族が多く確認されるが、大国エジプトや太守たちのペルシアへの反乱はしばしばこれらの諸民族やギリシア本土諸ポリスとも結びついた。 かかる場合ペルシア王は親征に乗り出すか代理の討伐軍を派遣し、その規模は十万人前後となる。反乱側も可能なかぎり兵力を動員し、両者の摩擦による膨大な資金が発生してギリシア人傭兵を数万人単位で動かした。ギリシア本土でもアテナイ・スパルタらの有力諸ポリスが覇権を争ったが、特にペルシアに友好的なポリスにペルシアからの資金がわたされて反ペルシア勢力をうつという構図が見られる。これら諸ポリスはその資金提供なくしては傭兵を動員することは出来なかった。前四世紀東地中海世界におけるギリシア人傭兵の活動はそのほとんどをアケメネス朝の資金ないし政治軍事的動向に左右されていた。換言すれば、これらのギリシア人傭兵は主にアケメネス朝の西部所領の治安維持のため用いられることで活動を活発化させてきたことが明らかとなった。得られた成果については、現在投稿準備中である。
|