西日本先史時代における文化変容に関する研究

2002 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 14710273
• Research Institution: Kyushu University
• Principal Investigator: 石川 健 九州大学, 比較社会文化研究院, 助手 (40332837)
• Keywords: 縄文時代 / 土器文化 / 文化構造 / 文化伝播

Research Abstract

本年度の計画では,西日本縄文時代後期から弥生時代開始期にかけての文化・社会動態の長期的変容過程についての研究のうち,九州縄文時代後期中葉の文化動態の把握を中心として研究を行った。なかでも,土器を中心に取扱い,九州地方への東日本系譜の文化情報の流入・受容過程に注目して検討を行った。従来,九州を中心に後期初頭以後波状的な文化情報の伝播があったことが指摘されており,今回対象とした時期も,そのような文化伝播を受ける時期の一つである。そのため,当該期以外の文化伝播が認められる時期との比較対象として,また九州地域における後期から晩期にかけての長期的文化変容を把握する上で重要な時期と考えた。
資料収集,分析の結果,九州の北東部を中心に外来系土器文化の影響がより強く認められ,既存の在来系土器群が,新来の土器文化の伝播受容を介して,次第に粗製化・レベルダウンしてゆく過程及び,それと併行して新来の外来系土器群が土器様式の構造上より精製度の高い位置を占めてゆくプロセスをモデル化することができた。また,このような外来系土器群は時期を経るにつれ次第に九州北半部地域へと分布域を拡大し,在来系土器群を凌駕し,土器様式の主体的要素となってゆく過程についても一定の見通しを得ることができた。これらの結果については現在論文を準備中である。
来年度は,以上の結果をもとに,後期中葉の外来文化情報の伝播を契機とする文化変容の過程について,南九州を含めた地域の様相把握を行う予定である。あわせて,土器文化以外の文化要素の動態を総合的に検討し,より包括的観点からの文化構造の変容過程のモデル化を行う。このような作業に基づき,九州各地での段階的な文化変容過程とその相互比較、及び地域間での異同の文化,社会的背景について検討を行う予定である。