2002 Fiscal Year Annual Research Report
弥生・古噴時代における鉄製武器の生産と流通に関する研究
Project/Area Number |
14710287
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Research Institution | National Research Institute Cultural Properties, Nara |
Principal Investigator |
豊島 直博 独立行政法人文化財研究所, 奈良文化財研究所・平城宮跡発掘調査部, 研究員 (90304287)
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Keywords | 弥生時代 / 古噴時代 / 鉄製武器 / 鉄剣 / 生産 / 流通 |
Research Abstract |
今年度は特に弥生時代から古墳時代前期の鉄剣とヤリについて、北は新潟県・群馬県から、南は長崎県・宮崎県に至るまで、資料の実測と写真撮影を広く行なった。その結果、新たな型式分類と編年の要素を抽出することに成功した。 従来の研究では、鉄剣本体部分の形を重視した分類が行われてきたが、それでは細かな時期差や地域性を判別することができなかった。しかし、鉄器の表面に残された装具の痕跡を丁寧に観察すれば、把の材質や把の部材の組み合わせ方は極めて多様であることがわかる。具体的にいうと、弥生時代の鉄剣の木製把は、二枚の木を組み合わせるタイプ、1本の木を刳り抜くタイプ、4枚の木を組み合わせるタイプの3種類に分けられる。この他、青銅製の付属具を用いるタイプ、鹿の角で作るタイプを加えれば、大きく5種類に分けることが可能であり、把の型式の違いに年代差や地域差が現れていることを確認した。また、鉄剣の表面に把の痕跡が残っていない資料についても、鉄剣の茎の形から本来装着されていた把の型式を推測することによって分析に加えることができた。こうして把握した編年と地域性によって、弥生時代の鉄剣の変遷には中期末・後期初頭、後期末・終末期初頭に二つの大きな画期があり、それが鉄剣の生産や流通の変化、さらには鉄剣の製作地と考えられる朝鮮半島・中国大陸の政治的な情勢をも反映していることが明らかになった。 一方、鉄剣と同時に観察を進めてきた鉄刀については、装具の痕跡が残らない資料が多い。鉄剣との共伴関係から年代を類推することはできるが、新たな分類の指標を見つける課題が残された。
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